2015 Fiscal Year Annual Research Report
化合物半導体を用いた3次元2次非線形フォトニック結晶の開発
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26706019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松下 智紀 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (50554086)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非線形光学 / 波長変換デバイス / 分子線エピタキシー / フォトニック結晶 / 化合物半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、周期空間反転AlGaAsを積層方向に互いに空間反転するよう表面活性化接合を繰り返すことにより、AlGaAsを用いた3次元2次非線形フォトニック結晶を開発することを目標としている。本年度は試作した2次元フォトニック結晶導波路の波長変換特性を含む光学特性の評価とその高品質化に取り組み、大きく分けて3つの成果を得た。 GaAsコア/AlGaAsクラッド2次元2次非線形フォトニック結晶スラブ導波路の1.55 μm帯の伝搬損失をストリークカメラで測定した結果、およそ500 dB/cmと非常に大きい値を得た。これは接合界面に存在する3 nmの非晶質層による吸収に起因することを数値計算により明らかにした。 およそ3 nm厚の非晶質層の解消を目指し、AlGaAs積層反転導波路を500℃でアニールした後に接合界面を透過電子顕微鏡により観察した。その結果2.5 nmまで低減に成功した。この低減により伝搬損失の低減が可能であることを示した。 これまで間接的に観察されてきた空間反転境界(逆位相境界)を直接観察するために、周期空間反転GaAs/AlGaAs導波路の逆位相境界を透過電子顕微鏡の暗視野像と2ビーム法により観察した。人工的な(011)面の逆位相境界は反転層と非反転層の境界であると特定した。この結果、周期空間反転GaAs/AlGaAs導波路は理想的に反転ドメインと非反転ドメインが周期的に配列していることを明らかにした。また反転ドメイン内Ge層上に意図しない逆位相ドメインを観察し、それが自己消滅することにより反転層のシングルドメインを形成することを観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
作製したGaAsコア/AlGaAsクラッド2次元2次非線形フォトニック結晶スラブ導波路の伝搬損失の低減を目指し、作製プロセスの改良に時間を費やしているためである。 伝搬損失の原因は3nmのGaAs非晶質層である。一般的にGaAs非晶質層解消のためにはアニールが用いられるものの、表面活性化接合の活性化ガスの変更による方法も検討され始めている。前者ではアニール温度やアニール雰囲気の最適化が不可欠であり、後者ではガス種の選択と接合条件の最適化が必要である。本研究ではこの伝搬損失の問題を必ず解決すべきであるため、両方の手法に挑戦し伝搬損失の低減条件を確立するために時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、継続して2次元非線形フォトニック結晶の高品質化とその波長変換特性の評価と並行して、計画通り3次元非線形フォトニック結晶による高次横モード波長変換素子の設計と試作を行う。 高品質化のために接合界面の非晶質層の解消を目指す。その方法はアニール条件(温度と雰囲気)の最適化または表面活性化接合用のガス種の選択と接合条件の最適化を考えている。今のところ既報のアニールに注力している。 高品質化後、2次元非線形フォトニック結晶導波路の波長変換特性の評価を行う。1.55 μm帯ポンプ光からの光パラメトリック蛍光実験を予定している。また、接合界面の面内方向ではなく垂直方向からポンプ光を入射することで伝搬損失の問題を回避できる。垂直入射による波長変換特性の場所依存性を評価することにより2次元非線形フォトニック結晶の新しい評価手法の確立も検討している。 さらに、バルク型3次元非線形フォトニック結晶の試作を目指す。これまで確立してきた手法を駆使し、ウッドパイル様の3次元非線形フォトニック結晶を作製する。垂直方向入射の光パラメトリック蛍光測定で伝搬損失の問題を回避し、当初の目標である3次元非線形フォトニック結晶からの初めての波長変換をめざす。 上記の研究項目で当初の目標を達成できると考えている。
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Causes of Carryover |
今年度の予算執行は計画通りであり、昨年度持ち越し額をほぼそのまま来年度に持ち越した。ただ、来年度も引き続き高品質化を継続するために来年度配分額を小額増やした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高品質化の条件最適化のために必要な小額の物品費として充てる。
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Research Products
(5 results)