2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26706020
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
岩長 祐伸 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主任研究員 (20361066)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 増強光工学 / メタ表面 / プラズモニクス / メタマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度までにおいてはとくに次の成果があった。 ・新規メタ表面構造の発案と実証。SOI基板を基にしたUVナノインプリント加工により、高スループットかつ高精度に相補的な積層(Stacked Complementary, SC)構造からなるメタ表面基板を作製した。このSC構造はプラズモンとフォトンのハイブリッド共鳴であることも明らかにした。 ・ナノインプリント法は基本的に垂直方向の加工技術であるが、不可避の残膜処理工程に注目して、水平方向の加工自由度を導入することに成功した。これにより、単一モールドによって多種類のメタ表面基板の作製が可能となり、低コスト化と実用度の向上を実現できた。 ・SC構造のメタ表面は完全放射率も可能であり、その高い放射率は蛍光分子の蛍光強度増強に非常に有用であることを実証した。平坦なシリコン基板と比べて、最大2500倍を超える蛍光強度増強を観測した。この大きな蛍光強度増強においては金属最表面と分子の界面制御が重要であり、自己組織化単分子膜(SAM)を用いることで先述の強度増強を実現した。 ・さらに、SAMなしのSC構造メタ表面においてラマン散乱を著しく増強できることを実験的に見出した。予想外の結果であり、実験データを手広く収集して、この現象が可能となるメカニズムについて考察を進めた。この内容については論文投稿の準備を進めた。 上記の結果についてこれまでに発表論文5報(いずれも研究代表者が対応著者)、招待講演5件(登壇のみ)、特許出願1件を通じて成果を発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
増強光工学の開拓を目指す本課題において、メタ表面という人工環境における物質内電子遷移の光による選択的な操作が中心的な課題である。
これまでに蛍光分子における光学遷移過程をメタ表面上で促進すること及び無輻射遷移に励起状態が流出する過程を人工的に抑制することには前年度までに成功していた。さらに複数の光学遷移過程が競合する場合に、それらを人工的に選択できることを実験的に明らかにした。蛍光やラマン散乱に関して、多数のプラズモン増強を報告した論文があるが、これらの人工的な選択は初めて成功したと認識している。この結果は光学遷移過程をメタ表面上で人工的に操作したことによって生じたものであり、物質の人工的な光操作の多面性を示唆する結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの成果を発展させる一方で、増強光工学の多様性を示す研究を推進していく方針である。 (1)分子の光学遷移過程から生じる競合信号(蛍光やラマン散乱)のメタ表面上での選択可能性に関して、その普遍性を検証すべく、これまで対象としてこなかった分子種について実験研究を行う。 (2)半導体における光学遷移過程の人工的な促進や選択は新規の半導体光デバイス開発につながる重要な基礎研究である。したがって、半導体を対象とする増強光工学を推進する方針である。半導体の光励起に伴う電子過程は発光のみならず、無輻射遷移と結びついた光伝導などもあり、競合過程に注意を払いながら、予断なく研究を進める。
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