2014 Fiscal Year Annual Research Report
多光子の無損失な波長変換法の構築と大規模量子計算への応用
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26706021
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
松田 信幸 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 研究主任 (10587695)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子光学 / 非線形光学 / 量子情報 / 光ファイバ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、単一光子の波長(周波数)分布を決定論的に変換・制御する手法の構築である。その方法として、相互位相変調(XPM)を用いる。XPMは媒質の屈折率変化を通じた光による他の光の制御を制御を可能にする決定論的な非線形光学効果である。本年度開始前に、分散制御されたフォトニック結晶ファイバ(PCF)を用いることで、強いポンプ光パルスが単一光子波束に誘起するXPMを用いて、ノイズフリーな波長変換が可能であることを実験により確認した。本年度においては、本手法の特性評価、量子光学実験への応用可能性に関する研究を行った。 ・相関二光子間の識別可能性を制御する実験を行った。光通信波長帯において、中心波長の異なる時間相関二光子を用意する。このうち片方の光子の波長分布をXPMによって変換し、もう片方の光子の波長分布との識別可能性を減少させた。二光子干渉実験により、識別可能性が制御されていることが確認された。さらに、波長変換が単なる波長フィルタリングによるものではないこと、波長変換が決定論的に行われていることを示唆する結果を得た。 ・光子の量子コヒーレンスが保持されていることを確認するため、二光子の量子もつれ状態がXPM後に保存されていることを確認する実験を行った。二光子の周波数自由度における量子もつれが、XPMの後にも存在することを実験により確認した。XPM波長変換の量子情報処理技術への応用可能性を示した。 ・XPMに付随する非線形過程として、相互吸収変調(XAM)と呼ばれる非線形な吸収過程が存在する。XAMが存在しても90%以上という高い変換効率で波長変換が行えることを示した。 ・光波長領域における量子情報実験のための多状態基底フィルタとして波長選択スイッチ(WSS)が有用であることを見出し、実験により検証した。 ・相関光子に対する非線形パルス伝搬の数値計算手法を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた研究をほぼ遂行することができた。単一光子のスペクトル制御性の向上(「今後の研究」に記載)は今年度に予定していた課題であったが、次年度以降に計画していた研究(数値計算手法の構築)及び新規な研究(量子もつれの保存、XAMの影響の評価、WSSの導入)に先行して取り組んだため、順序を入れ替え次年度に持ち越した。これまでの研究により、XPMによる単一光子波束制御の基盤技術をほぼ確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
・単一光子のスペクトル制御性を向上する。そのため、空間位相変調器等を用いた制御光パルスの波形整形技術を構築する。この波形整形された制御光パルスを用い、単一光子のスペクトルに対して波長シフトや周波数分離、スペクトル圧縮及び拡大といった様々な変調を加えることが可能であることを示す。 ・上記技術を用い、光子の時間-周波数自由度におけるビームスプリッタを実現する。さらに時間-周波数領域におけるHong-Ou-Mandel干渉実験が実効可能かを検証する。本実験により、光周波数という大きな状態空間を用いた量子状態操作及び量子情報実験の可能性を示す。 ・多光子の同時波長変換実験についても引き続き検討し、最大で四光子の同時波長変換実験を目指す。
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