2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26707007
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
斎藤 貴之 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (40399291)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 銀河形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、従来の Smoothed Particle Hydrodynamics (SPH)法の弱点であった流体不安定性を扱えないという問題点を解決した新しいSPH (DISPH)法をもちいて銀河形成過程の明らかにすることである。
本年度は化学進化を扱うための拡張を行った。化学進化は銀河進化の重要な指標である。シミュレーション結果を観測データと比較する上で、化学進化の情報は欠かすことが出来ない。また、放射冷却の効率を通じて銀河の進化に重大な影響を与える。文献から II/Ia型超新星爆発、AGB からの質量放出、中性子星合体から放出される元素のデータを収集して、銀河形成シミュレーションで使える形にしたソフトウエアライブラリ CELib を構築した。ソフトウェアライブラリとして実装したことで、シミュレーションコードとは独立に最新のデータを常に導入することが出来るようになっている。これを用いて、one-zone と非宇宙論的な孤立した銀河のシミュレーションを行い、採用するイールド表の違いによる金属量分布や銀河進化へのインパクトを調べた。最新のイールド表を組み合わせたものでは、天の川銀河の観測されている金属量分布を良く表すことが出来ることを確認した。イールド表によって星間空間に解放されるエネルギーが異なるため銀河の構造に与える影響も異なる。現在、本ソフトウエアについての論文とオープンソース版のコードを準備している。
また、本ライブラリを結合した N体/SPH シミュレーションコード ASURA を用いて宇宙論的初期条件からの銀河形成シミュレーションを実行している。これまでのところ同じ初期条件から出発しても、従来の SPH 法と DISPH 法を用いた場合では、形成される銀河の構造に大きな違いが見られている。本格的な結果の解析は次年度に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた宇宙論的銀河形成シミュレーションを開始するところまで進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き Planck 衛星のデータに基づく最新の宇宙論パラメータを採用して、宇宙論的銀河形成シミュレーションを行う。天の川銀河程度の質量を持つ銀河を対象に、その周辺だけを高分解能化した Zoom-in シミュレーションを行うことで潮汐場の効果を評価する。重力、流体力学、放射冷却、星形成、超新星爆発、AGB星からの質量放出、化学進化などを考慮する。第一に、数値流体スキームを変えた場合、化学進化のイールドテーブルを変えた場合の銀河形成過程を比較する。
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Causes of Carryover |
解析用計算機に追加したメモリモジュールの価格との兼ね合いから端数が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析用計算機に追加する HDD 代として利用する。
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Research Products
(8 results)