2014 Fiscal Year Annual Research Report
超流動ヘリウム中レーザー核分光で探る陽子過剰核g軌道最外殻核子の配位状態
Project/Area Number |
26707012
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
古川 武 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (30435680)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 実験核物理 / レーザー核分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超流動ヘリウム中に閉じ込めて行う申請者独自のレーザー核分光法を用いて陽子過剰かつ陽子数と中性子数が等しい短寿命不安定核94Ag、およびその周辺核の核スピン、モーメントを測定する。本手法により、既存の手法では測定困難であった上記領域核について、高い軌道角運動量に起因した最外殻g9/2軌道の支配的な配位状態を利用し、変形したN=Z=50近傍核のg9/2軌道核子一粒子状態からその核構造を議論する。 平成26年度は、申請者が開発した新しいレーザー核分光法を低収量な短寿命不安定核94Agならびにその周辺核へと適応すべく、放出された脱励起光の高効率検出に必要な、高い検出効率と散乱光除去を両立した集光検出器系の開発を行った。単純に光検出の立体角を大きくしただけではレーザー散乱光のバックグラウンドも同じく増加し、測定に支障が生じる。そこで従来の干渉フィルターを用いた光波長分離の代わりに、バンドルファイバーとダブルグレーティングモノクロメータを用いた新しい光波長分離システムを導入した。これにより脱励起光の検出効率を保ちつつレーザー散乱光バックグラウンド除去を実現する。開発の結果、バンドルファイバーと分光器を組み合わせ、分光器のスリット幅をファイバー径まで狭めることで、これまで問題となっていたレーザー散乱光のバックグラウンドを当初見積もりのさらに100分の1、従来システムの1/10000以下へと大幅に低減することに成功した。これにより、本実験で主要な問題となるレーザー散乱光をほぼゼロに低減することが可能となるだけでなく、励起レーザー強度を上げてもなお散乱光は十分に少ないため、大強度レーザーにより効率よく原子を励起することで脱励起光検出の絶対量向上も可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、平成26年度の最も大きな課題は放出された脱励起光の高効率検出に必要な、高い検出効率と散乱光除去を両立した集光検出器系の開発である。今回の開発により、当初見積りよりも2桁以上も散乱光除去率が高い検出器系の構築に成功したことで、ごくわずかな収量の不安定核原子からレーザー散乱光バックグラウンドに打ち勝って十分な強度で脱励起光を観測することが可能となり、目標達成に大きく近づいたと言える。 当初の平成26年度計画にあったもう一つの目標である理化学研究所仁科加速器研究センター RIビームファクトリー施設を用いた実験課題申請については、課題審査委員会の開催頻度が年2回から年1回へと減ったことに加え、当初予定されていた加速器でのテスト実験が装置側の都合によりキャンセルとなり、申請に必要なデータが得られなかったことにより、平成26年度での達成はできなかった。次年度には課題採択に向け万全を期して臨む予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降では、今回開発した集光光学系をさらに発展させ、分光器・検出器3台を有するシステムを完成させる。さらに、平成27年9月に予定されている加速器テスト実験によってRIビームファクトリー施設の実験課題申請に十分な開発成果を示し、実験課題採択を目指す。課題採択後は核モーメントの値が既知の109Ag核の測定を行って結果の正当性を確認し、その後は100Agから順に陽子過剰側へと測定を進める。少なくともg9/2軌道内核子の相互作用を強く反映する94, 96Agのアイソマー準位における核スピン・モーメントは最優先として測定を完遂させたい。 また、ビーム実験と並行して半導体検出器による高効率光子検出も開発し、検出効率の更なる向上を目指す。
|
Research Products
(4 results)