2015 Fiscal Year Annual Research Report
先進技術とエキゾチック原子法の融合による超高感度反粒子宇宙線測定器の開発
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26707015
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
福家 英之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (10392820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙線 / ダークマター / 反粒子 / 反物質 / エキゾチック原子 / 測定器開発 / 気球実験 / 先端機能デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宇宙線中に微量に含まれている反粒子(とりわけ未発見の反重陽子)の高感度探索を通じてダークマター等の初期宇宙物理の課題に迫ることを最終目的としている。宇宙線反重陽子は、超対称性粒子ニュートラリーノを始めとするダークマター候補の対消滅等を起源として極微量が存在している可能性がある。その検出に最適な低エネルギー領域(運動エネルギー数100MeV)にて最高の観測感度を得るため、宇宙線反粒子と測定器ターゲットとが形成するエキゾチック原子の崩壊過程から生ずる特性X線や荷電粒子を利用する、という従来にないオリジナルな粒子識別手法を用いた反粒子宇宙線測定器「GAPS (General Anti-Particle Spectrometer)」の開発を進めている。 平成27年度は、前年度に引き続き、GAPSのSi(Li)型半導体検出器を-35℃まで冷却するために導入を検討しているOHP(自励振動ヒートパイプ)という先進的な熱工学技術の開発を進めた。従来のOHP研究は主に卓上レベル(小型・単純構成・常温)の基礎研究であったが、GAPS用OHPには大型・複雑な配管構成・広温度範囲、という従来にない環境下での動作が求められる。前年度に実施した実機スケールの大型OHPモデルによる試験を発展させるべく、大きさだけでなく配管構成も実機を模したOHPモデルを開発し、評価試験を実施した。とりわけ、不均一な冷却が生じうる問題への対策を実験的に見出し、OHPのGAPSへの適性を高めた。 Si(Li)検出器そのものに関しても、前年度に着手した実機に向けた量産化法の開発を、産業界の知見も融合してさらに進めた。 GAPSのもう一方の主要測定器であるTOFプラスティックシンチレーションカウンタに関しては、前年度に行ったGEANT4シミュレーションを発展させつつ、実モデルによる評価試験も行い、測定器形状設計の最適化を進めた。 得られた成果は学会や学術論文にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、Si(Li)検出器の冷却機構への適用に向けたOHP(自励振動ヒートパイプ)の技術開発、Si(Li)検出器の量産化方法の検討、TOFプラスティックシンチレーションカウンタの実モデルによる形状検討、を実施し、いずれも順調に進んでいる。 特にOHP開発においては、OHPの適用性を大幅に向上しうる方策を見出す、という成果を挙げた。
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Strategy for Future Research Activity |
Si(Li)検出器冷却用のOHP開発を引き続き進め、その技術的適合性に関して結論づける。 Si(Li)検出器の量産化法の検討も引き続き進め、フィジビリティを見極める。 TOFカウンタに関しては、これまでは個々のカウンタの形状設計の最適化検討に注力していたが、今後はシステム全体としての設計検討に発展させる。 また、TOFカウンタ読み出しデバイスとしてのMPPC導入の可否を、GAPSの実飛翔環境への耐性の観点を含め、引き続き総合的に検討する。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Review of the theoretical and experimental status of dark matter identification with cosmic-ray antideuterons2016
Author(s)
T.Aramaki, S.Boggs, S.Bufalino, L.Dal, P.vonDoetinchem, F.Donato, N.Fornengo, H.Fuke, M.Grefe, C.Hailey, B.Hamilton, A.Ibarra, J.Mitchell, I.Mognet, R.A.Ong, R.Pereira, K.Perez, A.Putze, A.Raklev, P.Salati, M.Sasaki, G.Tarle, A.Urbano, A.Vittino, S.Wild, W.Xue, K.Yoshimura
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Journal Title
Physics Reports
Volume: 618
Pages: 1-37
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 南極周回気球による宇宙線反粒子探索計画GAPSの近況報告2016
Author(s)
福家 英之, 井上 陽晴, 野々村 拓, 小川 博之, 岡崎 峻, 崎本 一博, 吉田 哲也, 浅尾 義士, 高橋 克征, 山田 昇, 大丸 拓郎, 永井 大樹, 郷田 晃央, 井上 剛良, 橋本 岳, 蓑島 温志, 和田 拓也, 吉田 篤正, 井上 拓哉, 磯貝 亮, 河内 明子, 木俣 響, 高橋 俊, 加藤 千尋, 宗像 一起, 小池 貴久, 清水 雄輝, C.J. Hailey, et al.
Organizer
日本物理学会 第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学泉キャンパス
Year and Date
2016-03-19
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[Presentation] 南極周回気球による宇宙線反粒子探索計画GAPS2016
Author(s)
福家英之, 井上剛良, 加藤千尋, 河内明子, 小池貴久, 宗像一起, 永井大樹, 野々村拓, 小川博之, 岡崎峻, 崎本一博, 清水雄輝, 高橋俊, 山田昇, 吉田篤正, 吉田哲也, S. Boggs,W. W. Craig, P. v. Doetinchem, R. Fabris,C. J. Hailey R. Ong, K. Perez
Organizer
第16回 宇宙科学シンポジウム
Place of Presentation
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所
Year and Date
2016-01-07
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[Presentation] 南極周回気球による宇宙線反粒子探索計画GAPSの現状報告2015
Author(s)
福家 英之, 野々村 拓, 小川 博之, 岡崎 峻, 崎本 一博, 吉田 哲也, 浅尾 義士, 高橋 克征, 山田 昇, 大丸 拓郎, 永井 大樹, 郷田 晃央, 井上 剛良, 橋本 岳, 蓑島 温志, 和田 拓也, 吉田 篤正, 井上 拓哉, 磯貝 亮, 河内 明子, 木俣 響, 高橋 俊, 加藤 千尋, 宗像 一起, 小池 貴久, 清水 雄輝, C.J. Hailey, et al.
Organizer
平成27年度 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部大気球シンポジウム
Place of Presentation
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所
Year and Date
2015-11-06
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[Presentation] Status of cosmic ray antideuteron searches2015
Author(s)
P.vonDoetinchem, R.Pereira, T.Aramaki, C.Hailey, S.Boggs, L.Dal, A.Raklev, F.Donato, N.Fornengo, A.Vittino, H.Fuke, M.Grefe, B.Hamilton, A.Ibarra, S.Wild, J.Mitchell, M.Sasaki, I.Mognet, R.A.Ong, J.Zweerink, K.Perez, A.Putze, P.Salati, G.Tarle, A.Urbano, W.Xue, K.Yoshimura
Organizer
34th ICRC (Intl. Cosmic Ray Conf.)
Place of Presentation
Hague
Year and Date
2015-07-30
Int'l Joint Research
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[Presentation] Development of an Oscillating Heat Pipe Cooling System for GAPS2015
Author(s)
Hideyuki FUKE, Takumi ABE, Takuro DAIMARU, Takayoshi INOUE, Akiko KAWACHI, Hiroki KAWAI, Yosuke MASUYAMA, Hiroaki MATSUMIYA, Daishi MATSUMOTO, Yoshiro MIYAZAKI, Junichi MORI, Hiroki NAGAI, Taku NONOMURA, Hiroyuki OGAWA, Shun OKAZAKI, Takuma OKUBO, Shinji OZAKI, Daisuke SATO, Kensei SHIMIZU, Katsumasa TAKAHASHI, et al
Organizer
30th ISTS (International Symposium on Space Technology and Science)
Place of Presentation
Kobe
Year and Date
2015-07-10
Int'l Joint Research
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