2015 Fiscal Year Annual Research Report
鏡面対称性と強い電子相関がもたらす新奇なトポロジカル量子現象の分光イメージング
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26707016
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡田 佳憲 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (00707656)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸化物薄膜 / 強相関電子系 / トポロジカル絶縁体 / 超伝導 / STM |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度に引き続き、27年度もトポロジカル結晶絶縁体(TCI)に属するPb1-xSnxSeに着眼して研究を進めた。バルク単結晶のPb1-xSnxSeを超高真空下で壁開し、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて結晶表面の電子状態と原子配列を同時に調べた。特に、本年度はSnの置換量xに応じた表面Dirac電子のバンド構造の変化と結晶歪みの相関関係を定量的に調べた。
26年度までの成果によって、結晶表面の歪みが鏡面対称性の破れをもたらし、Dirac電子に質量(Diracノードにエネルギーギャップ)を与えていることがわかっている。本年度の実験結果から、結晶歪みは表面でのみ存在し、バルクでは存在しないことがわかった。さらに、結晶表面では、同様な結晶歪みがxによらず存在することも明らかになった。一方、磁場中のトンネルスペクトル(ランダウレベル)の解析を進めると、Dirac電子のバンドギャップの大きさは明確なx依存性を示。そこで、結晶歪みとDiracギャップの因果関係を理解するため、理論的な考察も推し進めた。その結果、表面Dirac電子が有する波動関数の広がりの効果が、Diracギャップの大きさを支配する主要な因子であることをつきとめた。つまり、表面Dirac電子が有する波動関数の広がりが大きく(小さく)なるほど、結晶表面に局在する結晶歪みの効果は弱められ(強められ)、Diracギャップの大きさは小さく(大きく)なる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果により、Sn置換量xに依存したバンド構造と結晶歪みとの相関関係を明らかにすることができた。トポロジカル量子相転移をまたいだバンド構造の変化を明らかにすると共に、表面Dirac電子が有する波動関数の広がりの効果の重要性を実験的に指摘することが出来た。以上、研究計画はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度、27年度の研究成果によって、トポロジカル結晶絶縁体(TCI)ならではの様々な特徴が微視的に明らかにできた。Dirac電子系へのエネルギーギャップの導入はデバイスへの応用の観点から重要である。今後は、薄膜作成技術を駆使し、積極的に電子状態を制御することが求められる。なお、広い視野に立てば、Pb1-xSnxSeのみならず、酸化物も含めた広範囲の材料での新奇量子物性探索にも大きな意義がある。
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Causes of Carryover |
物品の納期が予想以上にかかかったため、次年度仕様額がゼロにならなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の初期に物品が納品されるため、その費用に使用する予定である。
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