2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26707021
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
鈴木 はるか (丹治はるか) 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 准教授 (40638631)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子・分子物理学 / 共振器量子電気力学 / 量子エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度には、全光型量子スイッチに用いる実験共振器の安定化に向けて、1)一体型参照共振器の設計と構築、2)共鳴光および非共鳴光の線幅狭窄化と線幅評価、3)原子と光子の結合強度の増大に向けた光双極子トラップの実装、4)原子トラップ用レーザー周波数安定化機構の改良を行った。 1)これまで使用していた参照共振器は複数の部品から成っており、それにより機械的安定性が損なわれて透過スペクトルの観測が困難であった。そこで、一体型の構造を設計し構築することにより、機械的安定性を向上させた。 2)実験共振器の安定化に際し、原子の共鳴光に対する参照共振器の安定化、参照共振器に対する原子の非共鳴光の安定化、非共鳴光に対する実験共振器の安定化、の三段階を経る必要がある。第一段階については共鳴光の狭窄化を行うとレーザー発振が安定しなくなるという問題が新たに生じた。そこでその原因を探った結果、狭窄化を行う光フィードバック系に予期せぬ場所からの戻り光が存在していることが判明した。そこで不要な戻り光の除去を行い、安定的な発振を実現した。また、第二段階で用いる非共鳴光の狭窄化を新たに行った。さらに、狭窄化の結果をこれまでよりも高精度に評価するために、自己遅延ヘテロダイン法による測定系を構築した。その結果、共鳴光は50 kHz以下、非共鳴光は440 kHzという線幅の測定値が得られた。これらは参照共振器を用いた実験共振器の安定化という用途に対して十分に小さい値である。 3)前年度までに構築した原子と光子の結合強度を可変にする機構を用いて、真空チャンバー中に双極子トラップ光を導入し、原子のトラップを試みた。 4)これまでに既に磁気光学トラップによる原子の冷却・捕捉は実現していたが、レーザー周波数ロックが外れやすいという問題があった。そこで、適切な周波数フィルターの導入をはじめとした改良を加え、安定性を高めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者のライフイベントにより進捗に遅れが生じた結果、当初予定していた実験共振器の安定化には至らなかった。しかしながら、参照共振器の機械的安定性の向上を行い、また、安定化に用いる2つのレーザー光の線幅狭窄化および安定化にも成功するなど、実験共振器の安定化に向けて着実に前進している。一方、磁気光学トラップ用のレーザー周波数の安定性が低いことの原因を解明し、安定性の向上を実現することで、原子の安定的な冷却および捕捉の目処が立った。さらに、これまでは試験系で動作確認を行っていた原子と光子の結合強度を可変にする機構を用いて、双極子トラップ光を真空チャンバー中に導入することにより、光共振器中における原子と光子の強結合の実現に向けた道筋ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は実験共振器の安定化に向けて、まずは参照共振器の共鳴光に対する安定化および非共鳴光の参照共振器に対する安定化に取り組む。さらに、非共鳴光に対する実験共振器の安定化を目指す。また、双極子トラップ光を共振器の軸上で集光するために、短焦点距離のレンズを真空中に設置する。これらにより、原子と光子の強結合が可能となるのみならず、これまでに開発してきた、光双極子トラップを用いて結合強度を可変にする機構を真空系で実装することが可能となる。結合強度が可変となることにより、実験系における各種パラメータの結合強度に対する依存性について詳細なデータを取得することができ、全光型量子スイッチ実現の目処が立つと期待される。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:研究代表者のライフイベントにより研究計画に遅延が生じたため。 使用計画:実験共振器の安定化のための光学系およびフィードバック制御系の作製に使用する。
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