2015 Fiscal Year Annual Research Report
太陽系氷天体の熱水反応実験と物質進化モデル:太陽系形成過程とハビタビリティの解明
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26707024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関根 康人 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60431897)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 惑星科学 / 地球化学 / 宇宙化学 / 惑星探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系の氷天体は、原始太陽系円盤の温度分布や惑星移動の検証、生命につながる化学進化やハビタビリティの理解という、現在の惑星科学にとっての大問題に対して重要なヒントを与えうる天体である。しかし、その表面や内部の物質は現在までの熱進化によって変成を受けており、それらから材料物質を知ることは容易ではなく、内部海のpHや酸化還元状態、温度を推定することも不確定性が大きい。本課題では、氷天体内部の熱水反応のキネティクッスを室内実験により明らかにする。得られた実験結果を内部海物質進化モデルに組み込み、観測される表面や内部の物質から、天体の材料物質や熱進化、内部海の温度・組成を明らかにすることを目指す。平成27年度では、前年度に実証した氷衛星エンセラダス内部の熱水環境について、探査データに基づき岩石組成を明らかにした。具体的には、探査機カッシーニが発見したエンセラダスから噴出するプリューム中のナノシリカが形成するための内部岩石コアの岩石組成を制約した。その結果、エンセラダスの岩石コアは、地球マントルのように分化してはおらず、未分化のコンドライト的組成であることがわかった。エンセラダスの岩石成分が過去に一度も溶融していないことを示し、原始的な微生物の食料である水素を豊富に発生する独自の熱水環境が存在することを示唆する。エンセラダスに存在するかもしれない生命の生息環境や食料となりうるガス種、さらには形成初期の温度条件を初めて具体的に制約するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度明らかにした氷衛星内部の熱水環境のさらなる化学的特徴を明らかにすることができた。今回の成果は、エンセラダスに地球と異なる独自の熱水環境が存在することを明らかにし、生命の食料となりうるガス種を初めて具体的な形で示したものである。これらの知見は今後の太陽系生命探査においても重要となる。成果は、Nature Communicatins 誌に掲載され、広くマスコミにも取り上げられた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは氷衛星エンセラダスに着目して研究を行ってきたが、より広いパラメタ空間での実験を行うことで、他の氷衛星エウロパやガニメデ、タイタン、準惑星セレスに成果や知見を拡張する。また、セレスについては現在探査機ドーンが到着し、初期結果を送ってきており、世界に先駆けてこれらを解釈する。
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[Journal Article] High-temperature water-rock interactions and hydrothermal environments in the chondrite-like core of Enceladus2015
Author(s)
Sekine, Y., T. Shibuya, F. Postberg, H-.W. Hsu, K. Suzuki, Y. Masaki, T. Kuwatani, M. Mori, P.K. Hong, M. Yoshizaki, S. Tachibana, S. Sirono
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 6
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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