2015 Fiscal Year Annual Research Report
中・古生代層状チャートに記録された隕石衝突履歴の完全解読
Project/Area Number |
26707027
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
尾上 哲治 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (60404472)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 地質学 / 地球化学 / 層位・古生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,平成26年度に引き続き中古生代の隕石衝突履歴を解読するために,ペルム紀後期からジュラ紀前期(約1.7~2.5億年前)層状チャートを構成する粘土岩試料の採取を行った.粘土岩は,岐阜県坂祝町,各務原市に分布する美濃帯の三畳系~ジュラ系チャートおよび,本巣市岩井谷のペルム紀/三畳紀境界からの試料を中心に採取した.H26年度には約400の粘土岩試料を採取したが,本年度はそれに加えて約800試料採取した. 持ち帰った試料については,本研究課題で導入した粉砕器(マルチビーズショッカー)を用いて粉末試料を作成した.粉末試料はバインダー(セルロース)と混合後にプレス機でペレットを作成し,これを蛍光X線分析装置を用いて化学組成の分析を行なった.採取試料についてNiやCrに注目して蛍光X線分析装置を用いた定量分析を進め,現在までに2層準からイジェクタ層の候補を見出した.これらの粘土岩層については,現在オスミウム同位体分析を進めており,イジェクタ層の同定を進めている.また平成27年度は,従来の研究で報告した三畳紀後期ノーリアン中期のイジェクタ層について,有機炭素同位体分析,微化石層序を検討し,この隕石衝突により当時のパンサラサ海の遠洋性生物群集に群集変化が起こったことを明らかにした.この成果については,国際誌への論文としてまとめ,現在投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は以下の3つの研究を予定していた. ①野外調査 平成26年度に採取した美濃帯(岐阜県坂祝町)の三畳系~ジュラ系チャートに加えて,同地質帯のペルム系層状チャートを採取する. ②蛍光X線分析装置によるCr, Ni定性定量分析 ①得られた約1000試料の粘土岩について,粉末試料を作成し,蛍光X線分析を用いた元素分析を行なう. ③白金族元素の定量分析 イジェクタ層の可能性があると判断された試料については,隕石中に豊富な白金族元素(Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt)の濃度を調べる. 当該年度は,①については平成26年度に加えてペルム系層状チャート試料を採取,分析した.②については平成26~27年度に採取した膨大な量の岩石試料(1200試料)について分析用粉末試料の作成と蛍光X線分析が順調に進んでいる.③についてはイジェクタ層の候補に対してOs同位体分析を行った.また従来報告されているイジェクタ層についても白金族分析を行い,衝突天体の起源を明らかにすることができた.この成果については論文として報告した(Sato et al., 2016).以上の研究の進捗状況から,現在までの研究の達成度は良好であると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究結果をふまえて,平成28年度は以下の4つの研究を行う. ①野外調査 平成27年度に採取した美濃帯(岐阜県坂祝町)の三畳系~ジュラ系チャートに加えて,同地質帯の中部ペルム系層状チャートを採取する. ②蛍光X線分析 ここでは平成28年度に加えて得られる約600試料について,粉末試料を作成し,蛍光X線分析装置を用いた元素分析を行なう. ③白金族元素の定量分析,Os同位体分析 イジェクタ層の可能性があると判断された試料については,隕石中に豊富な白金族元素(Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt)の濃度を調べる.分析はこれまでの研究と同様に,放射化分析とNi-fire assay法による誘導結合プラズマ 質量分析装置(ICP-MS)を用いた白金族元素濃度の定量分析を行なう.イジェクタ層と判断された試料について,オスミウム同位体分析を行い,隕石衝突の強固な証拠を得る.オスミウムは,複数の同位体を持ち,地球に落下する大部分の隕石が,高いオスミウム濃度と低いオスミウム同位体比(187Os/188Os)を持つことが知られている.海洋研究開発機構のマルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析装置(MC-ICP-MS)を用いて,オスミウム濃度と同位体比の変動を調べる. ④隕石衝突履歴の解読 イジェクタ層と判断された試料については,上下層準のチャートから微化石用の試料を採取する.フッ化水素酸法で放散虫・コノドント化石を抽出し,属種の同定および隕石の衝突年代を明らかにする.さらに隕石衝突がこれらの化石群集に与えた影響を将来的に調べるため,衝突を記録した層準を挟んで化石層序も明らかにする.
|
Research Products
(19 results)
-
[Journal Article] Sedimentary PGE signatures in the Late Triassic ejecta deposits from Japan: Implications for the identification of impactor2016
Author(s)
Sato, H., Shirai, N., Ebihara, M., Onoue, T., Kiyokawa, S.
-
Journal Title
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
Volume: 442
Pages: 36-47
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Paleoenvironmental changes across the Carnian/Norian boundary in the Black Bear Ridge section, British Columbia, Canada2016
Author(s)
Onoue, T., Zonneveld, J.-P., Orchard, M. J., Yamashita, M., Yamashita, K., Sato, H., Kusaka, S.
-
Journal Title
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
Volume: 441
Pages: 721-733
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
[Presentation] An asteroid impact in the Late Triassic triggered mid-Norian radiolarian faunal turnover in the Panthalassa Ocean2015
Author(s)
Onoue, T., Sato, H., Yamashita, D., Ikehara, M., Yasukawa, K., Fujinaga, K., Kato, Y., Matsuoka, A.
Organizer
American Geophysical Union fall meeting
Place of Presentation
San Francisco
Year and Date
2015-12-16 – 2015-12-16
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Sedimentary signatures of a chondritic impactor for an Upper Triassic impact event2015
Author(s)
Sato, H., Onoue, T., Shirai, N., Ebihara, M., Nozaki, T., Suzuki, K., Kiyokawa, S.
Organizer
Goldschmidt Conference
Place of Presentation
Prague
Year and Date
2015-08-20 – 2015-08-20
Int'l Joint Research
-
[Presentation] Carbon and oxygen isotope record from the Rhaetian interval at the Kardolína section, Slovakia2015
Author(s)
Onoue, T., Shirozu, H., Michalík, J., Yamashita, D., Kusaka, S.
Organizer
IAS 31st Meeting of Sedimentology
Place of Presentation
Krakow
Year and Date
2015-06-24 – 2015-06-24
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-