2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26708004
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
庄子 良晃 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (40525573)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ホウ素 / ボリニウムイオン / ルイス酸 / 超ルイス酸 / 小分子活性化 / 二酸化炭素 / 二硫化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、単離可能な究極のルイス酸分子として、ホウ素が結合の手を二本しかもたない二配位ホウ素カチオン種「ボリニウムイオン」を開発し、既存のルイス酸ではなし得ない反応化学・物質科学を探求する。平成26年度は、ボリニウムイオンを用いた新たな反応活性種の創製に取り組んだ。これまで、ボリニウムイオンが二酸化炭素の炭素ー酸素二重結合を切断可能であることを論文報告している(Nature Chem. 2014, 6, 498)。そこで、ボリニウムイオンによる二流化炭素の活性化反応を検討したところ、期待どおり炭素ー硫黄二重結合切断反応が進行し、アリールチオカルボニルカチオン化合物であるチオアロイルカチオンが得られた。さらに、チオアロイルカチオンの初めての単結晶X線構造解析に成功し、その分子構造の詳細を明らかにした。理論化学計算も含めた検討から、チオアロイルカチオンは、これまで寄与がほとんどないと考えられてきた炭素ー硫黄三重結合性を有することを明らかにした。これは、過去Olahらにより提唱されたチオアロイルカチオンの電子構造の描像とは全く異なっている。以上の結果は、ボリニウムイオンが新たな反応および反応活性種の開発に極めて有用であることを示している。本年度はまた、研究の促進に向け専用のグローブボックスを1台導入し、ボリニウムイオンを大量合成するための環境を整えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にあるように、ボリニウムイオンが新たな反応および反応活性種の開発に有用であることを示した。また、ボリニウムイオンによる反応化学・物質科学を推進するための、大量合成の環境基盤を整えた。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、ボリニウムイオンによる反応化学・物質科学を探求する。ボリニウムイオンの親カルコゲン性に着目した反応開発を行う他、ナノカーボン類の活性化反応にも取り組む。 加えて、ボリニウムイオンの詳細な電子構造を、実験的にさらに解明することに取り組む。具体的には、軟X線吸収・発光測定によりバンド構造を明らかにするとともに、既存のホウ素化合物のバンド構造と比較し、ルイス酸性度を評価する。これらの結果は、ボリニウムイオンの11B NMRケミカルシフトとの相関についても検討する。
|
Research Products
(10 results)