2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26708008
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
所 裕子 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50500534)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 固体物性 / 機能性材料 / スイッチング / 双安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質科学分野の重要な研究課題の一つに、高機能・高性能な物質の創製が挙げられる。本研究では、下記の研究課題を推進した。 1. 非平衡ダイナミクスを活かした高効率相変換物質の開発:超高感度で外場に応答し相転移するような機能性を実現するためには、エネルギー障壁の低い双安定性物質を合成するという方法が有効である。本年度は、室温で双安定状態を有するラムダ型五酸化三チタンに着目し、物質の形状を制御することにより、エネルギー障壁の低い双安定性状態を作り出すことを試みた。これまで報告されているラムダ型五酸化三チタンは20~30 nmの球状ナノ微粒子およびその焼結体であったが、本研究では200×30 nm程度の短冊状微粒子が焼結したラムダ型五酸化三チタンを得た。合成した短冊状のラムダ型五酸化三チタンの転移エンタルピーや転移エントロピーを調べると、球状ナノ微粒子よりも大きな値を示し、よりエネルギー障壁の低い双安定性状態を有することが示唆された。 2. 多様な相転移を共存させることによるマルチ応答物質の開発:平成27年度から本格的にスタートさせる予定ではあるが、本年度は準備のため主に知識の獲得を行った。 3. 熱力学的挙動を利用したエネルギー蓄熱特性を示す双安定性物質の開発:双安定性物質の転移エンタルピーや転移エントロピーなどの熱力学的パラメーターを制御すると、ある限られた領域で、観測される準安定相と隠れた最安定相が存在する。この準安定相に圧力などの外部刺激を加えて最安定相に転移させてエネルギーを放出させ、一方で、光や熱で最安定相から準安定相へ相転移させ蓄熱するというプロセスを想定している。物質としてはラムダ型五酸化三チタンを対象とし、本年度は、フォノンモード第一原理計算および相転移平均場理論モデル計算を実行し、ラムダ型五酸化三チタンの格子振動の理解および解釈、熱力学パラメーターへの影響を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、おおむね順調に進展した。 1. 非平衡ダイナミクスを活かした高効率相変換物質の開発:本年度は、室温で双安定状態を有するラムダ型五酸化三チタンに着目し、物質の形状を制御することにより、エネルギー障壁の低い双安定性状態を作り出すことを試みた。結果、当初想定したとおりの形状、サイズ200×30 nm程度の微粒子が焼結したラムダ型五酸化三チタンを得ることができ、この物質の転移エンタルピーおよび転移エントロピーがこれまでの球状ナノ微粒子よりも大きな値であることが明らかとなり、よりエネルギー障壁の低い双安定性状態の物質を得ることができたと考えている。 2. 多様な相転移を共存させることによるマルチ応答物質の開発 平成27年度から本格的にスタートさせる予定ではあり、本年度は知識獲得・準備を行った。 3. 熱力学的挙動を利用したエネルギー蓄熱特性を示す双安定性物質の開発 準安定相に圧力などの外部刺激を加えて最安定相に転移させてエネルギーを放出させ、一方で、光や熱により最安定相から準安定相へ相転移させ、蓄熱させるというプロセスを想定している。ラムダ型五酸化三チタンを対象とし、本年度はフォノンモード第一原理計算および相転移平均場理論モデル計算を実行し、実験結果と整合性とれた理論計算結果が得られ、ラムダ型五酸化三チタンの格子振動の理解および解釈、熱力学パラメーターへの影響について深く検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、下記のように推進する予定である。 1. 非平衡ダイナミクスを活かした高効率相変換物質の開発:本年度は、期待したとおりの形状のラムダ型五酸化三チタン・微粒子焼結体を得たことにより、エネルギー障壁の低い双安定性状態の物質を合成できたと考えている。今後は、この物質に光や圧力といった外部刺激を加え、その応答性を検討していく予定である。 2. 多様な相転移を共存させることによるマルチ応答物質の開発:平成27年度から本格的にスタートさせる。具体的には、双安定性状態にある物質に、光や圧力といった刺激に加え、電流誘起相転移など電気的な応答性の発現を目指し、多様な刺激で相転移が起こるマルチ応答物質を開発していく予定である。 3. 熱力学的挙動を利用したエネルギー蓄熱特性を示す双安定性物質の開発:本年度は、ラムダ型五酸化三チタンを対象にフォノンモード第一原理計算および相転移平均場理論モデル計算を実行し、その格子振動の理解および解釈、熱力学パラメーターへの影響を調べた。今後は、相転移にともなうエネルギー収支を調べ、計算で得られた理論的知見を活かし、蓄熱・放熱特性を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定の装置の仕様(性能)について、慎重に検討を行っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度で得られた結果をもとに購入予定の装置の仕様(性能)を慎重に決定し、購入する予定である。
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Remarks |
研究室HPにて、研究成果の発信を行っている。
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[Journal Article] Structural phase transition between γ-Ti3O5 and δ-Ti3O5 by breaking of one-dimensionally conducting pathway2015
Author(s)
K. Tanaka, T. Nasu, Y. Miyamoto, N. Ozaki, S. Tanaka, T. Nagata, F. Hakoe, M. Yoshikiyo, K. Nakagawa, Y. Umeta, K. Imoto, H. Tokoro, A. Namai, S. Ohkoshi
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Journal Title
Cryst. Growth Des.,
Volume: 15
Pages: 653-657
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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