2015 Fiscal Year Annual Research Report
複合型分子状金属酸化物の相乗的機能に基づく触媒開発
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26708009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 康介 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40595667)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 触媒 / ナノ材料 / 超分子化学 / 構造・機能材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分子状金属酸化物と金属クラスターや有機分子等からなる複合材料の相乗機能を基盤とした高機能分子触媒を開発することを目的としている。特に、これらの触媒の可視光応答性や電子/プロトン貯蔵特性を活用した環境調和型触媒システムを開発する。本年度は、分子状金属酸化物からなる複合体の可視光応答型触媒システムを利用したスルフィドの酸化反応およびスルホキシドの還元反応を行った。 セリウム四核クラスターを内包した分子状タングステン酸化物触媒が、可視光を駆動力として一気圧の酸素を酸化剤としたスルフィドの選択酸化反応に高い活性を示すことを見出した。また、欠損型分子状タングステン酸化物にセリウムアセチルアセトナトを加えて反応を行った場合にも同様に反応が進行した。これは、反応系中で先述の触媒構造が形成されることにより触媒活性を示したと考えられる。本触媒系は、芳香環に様々な置換基を有するスルフィドの酸化反応に高い活性を示し、対応するスルホキシドが高収率、高選択的に得られた。電子供与性基、電子求引性基を有するスルフィドや、反応性の低い脂肪族スルフィドにも活性を示した。 また、欠損型分子状タングステン酸化物が、可視光を駆動力としたスルホキシドの選択還元反応に高い活性を示すことも見出した。欠損型分子状タングステン酸化物にアルコールを添加して可視光を照射することにより、メチルフェニルスルホキシドからチオアニソールが生成した。質量分析および電気化学測定より、スルホキシドがタングステン酸化物の欠損部位に配位することで効率的な還元反応が進行したことが示唆された。脂肪族スルホキシドや還元性官能基を有するスルホキシドについても選択的な還元反応が進行し、対応するスルフィドを高収率、高選択的に得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複合型分子状金属酸化物の相乗機能を利用した分子触媒の合成および触媒反応に関して、分子状タングステン酸化物とセリウムやアルコールとの複合体からなる可視光応答型触媒システムを利用して、スルフィドの酸化反応やスルホキシドの還元反応の開発に成功するなど、おおむね計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、今年度までの触媒開発で得られた知見や量子化学計算の結果に基づいて触媒活性の向上を検討するとともに、新たな複合型金属酸化物触媒の開発も行う。特に、様々な金属種や核数のクラスターと分子状タングステン酸化物から構成される複合型分子触媒を合成する。触媒の組成や構造と酸化還元電位、可視光応答性、触媒特性等との相関を調べる。また、選択的高難度反応をターゲットした触媒開発も検討する。
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Research Products
(13 results)