2014 Fiscal Year Annual Research Report
10秒を超える室温長寿命励起子による非コヒーレント光応答型非線形吸収材料の構築
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26708010
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平田 修造 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (20552227)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非線形吸収 / 逆過飽和吸収 / オプティカルリミット / りん光 / 室温りん光 / 重水素化 / ステロイド / フォトクロミック材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に非線形吸収は瞬時強度の強いコヒーレントパルスで生じるが、これまでに室温で1秒以上の長寿命励起子を用いて、光照射によりで励起子を蓄積させやすくした結果、100 mW/cm2の非コヒーレント光での大きな非線形吸収の発現に成功している。 本研究では太陽光レベルの非コヒーレント定常光で吸光度が大きく増加する非線形吸収材料の構築を目指す。具体的には、ヒドロキシステロイド中の室温で10秒以上の励起三重項寿命を持つ芳香族をアクセプター(A)とし、項間交差効率が高い金属錯体をドナー(D)として、これらをヒドロキシステロイド中にドープした材料で目標を達成する。具体的な方針としては、ヒドロキシステロイド中でのAの寿命を1秒から10秒以上に伸ばし、さらに三重項三重項消滅が生じにくい材料設計を行い、三重項励起子を蓄積させやすくすることで、数mW/cm2の光強度で大きな非線形吸収応答を示す材料の構築を目指す。 平成26年度は、励起状態においてC-H振動やC-D振動が影響しにくくなるような平面性芳香族化合物をヒドロキシステロイド中にドープし、どのような構造において励起三重項状態の寿命が長くなるのかのスクリーニングを行った。その結果、10秒を超えるような励起三重項寿命を有する芳香族化合物を数点見出すことに成功した。また、重水素化する位置を色々と変化させた芳香族を合成し、C-HやC-D振動のどの程度励起三重項寿命に影響するのかを調査した。その結果C-H振動やC-D振動に影響されないような炭素上に励起された電子が存在した方が励起三重項状態の寿命が長くなるという知見を実験的に観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は100 mW/cm2の非コヒーレント光での大きな非線形吸収の発現した材料における三重項励起子の蓄積メカニズムの詳細を調査した。照射光が弱い状況では三重項励起子の蓄積は、照射光強度に対して線形に増加したが、照射光強度が増加するにしたがって飽和する現象が観測された。その飽和は三重項励起子の蓄積に伴う光増感効率の減少および三重項三重項消滅によって生じていることを定量的に明らかにした。以上の結果は、S. Hirata et al, Nature Materials, 2014, 13, 938に採択され、Nature Materials, 2014, 13, 917.のNews & Viewsにも紹介された。 また、室温大気下のヒドロキシステロイド中で10秒以上および10秒近傍の励起三重項寿命を有するAをいくつか見出すことに成功した。 以上から当初の研究計画通りに研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は平成26年度に導入した過度吸収分光装置を用いて、ベンゾフェノンを増感剤として、これと合成されたヒドロキシステロイド中で10秒近傍の励起三重項寿命を有するAを溶媒に溶解させ、三重項増感の手法を用いて合成したAの三重項励起子の吸収スペクトルと吸光係数を決定する。次に特定波長(λ1)において、金属錯体であるDの吸光係数は小さい一方で、Aの吸光係数は大きくなるようなDとAの組み合わせを選定する。この際DからAの三重項エネルギー移動が生じるようにAの最低励起三重項エネルギー(T1)がDのそれよりも低くなるようになるものを選定する。選定されたDとAの組み合わせをヒドロキシステロイドにドープしたホストゲスト材料を作成し、十分光が弱い際の吸光度が0.1となる厚みのホストゲスト材料の薄膜を作製する。λ1の光の強度を増加させながら吸光度の変化を測定する。一つの目標値として、10 mW/cm2の光照射により吸光度が0.2以上に増加する系を目指す。λ1の波長域は合成されたAの三重項励起子の吸収スペクトル次第であるが、これまでに購入した半導体レーザーやアルゴンイオンレーザーを用いて405 nm、445 nm、473 nm、488 nm、515 nm、532 nm、647 nmの波長域で対応が可能である。 またAの励起三重項寿命が長くなる要因の解明として振電相互作用の解析を計算コンピューターを用いて行う。どのような骨格において振電相互作用が小さくなり、励起三重項の寿命が延びるのかに関して解析を進める。
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Research Products
(17 results)