2014 Fiscal Year Annual Research Report
ビニル付加・開環重合間の交差生長反応を実現するカチオン共重合系の創出
Project/Area Number |
26708014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金澤 有紘 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50621322)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高分子合成 / カチオン重合 / 開環重合 / 共重合 / ビニルモノマー / オキシラン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,異なる重合系を融合させたビニル付加・開環カチオン同時共重合系を構築することを目的とし,本年度は主に(1)ビニルモノマーとオキシランの共重合における交差生長反応に必要な要素の解明,(2)ビニルモノマーと環状ホルマールの制御カチオン共重合系の構築の2つのテーマに沿って研究を行った。 (1)では,オキシランから生成するオキソニウムイオン生長種の開環により生成しうる炭素カチオン種の構造が,ビニルエーテルとの共重合における交差生長反応の頻度に影響を与えることがわかった。すなわち,より安定な炭素カチオン種を生成するような側鎖置換基を有するオキシランを用いることで,より高頻度に炭素カチオン生長種が生成したため,ビニルエーテルへの交差生長反応が高頻度に起こったと考えられる。さらに,エステルやエーテルなどの弱いルイス塩基が交差生長反応の頻度に影響を与えることもわかった。これらの弱いルイス塩基は,オキソニウムイオン生長種を求核的に攻撃することで,炭素カチオン種への開環を促進したと考えられる。また,アルコキシ基を有するオキシランを用いてビニルエーテルとの共重合を行うと,アルコキシ基の転位を伴った特異な機構により反応が進行して共重合体が生成することも見出した。 (2)では,1,3-ジオキセパンを環状ホルマールとして用い,SnCl4と酢酸エチルを組み合わせた開始剤系を設計し,適切な溶媒・温度条件下で反応を行うことで,ビニルエーテルとの制御カチオン共重合が進行することを見出した。このとき,適切な反応性を有するビニルエーテルを組み合わせることが両モノマー間の交差生長反応が進行するために重要であり,とくに2-クロロエチルビニルエーテルが有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的として主に2つのテーマを掲げたが,上記のように新しい知見・意義深い結果が多く得られたことから,当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きビニル付加・開環カチオン同時共重合系のために重要な要素を明らかとし,種々の制御に向けた検討を行っていく。とくに,交差生長反応の頻度のさらなる制御や,オキシランを用いる系での長寿命生長種生成を伴った重合制御の可能性,環状ホルマールとスチレン類を用いた制御カチオン共重合系の構築などを行う。 加えて,環状エステル類を環状モノマーとして用いたビニル付加・開環同時共重合系の検討も行う。アルコールを開始種とするビニルエーテルのカチオン重合系を用いアセタール生長末端を生成させ,金属触媒を介したアルコキシ交換反応を組み合わせることで,ポリビニルエーテルの側鎖にポリエステルが導入された共重合体の合成を目指す。 また,ビニルモノマーとオキシランに加え第三成分を用いることで,異種モノマーの三元共重合の検討も始めている。各モノマー間の交差生長反応の有無・特異性を利用することで,モノマー配列の制御の可能性を探っていく予定である。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに使用したが,年度末に未使用額を敢えて0円とするよりは次年度以降に使用しても研究の遂行に支障は無いため,18,149円を次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に引き続き,研究遂行のための物品費・旅費として使用する予定である。
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