2015 Fiscal Year Annual Research Report
改変型鉄獲得蛋白質による緑膿菌の鉄獲得阻害と光線力学的反応を併用する殺菌システム
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26708018
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荘司 長三 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (90379587)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細菌 / ヘム / 蛋白質 / 鉄 / ヘム獲得蛋白質 / 増殖阻害 / 金属錯体 / 光殺菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,緑膿菌のヘム獲得蛋白質HasAの受容体蛋白質HasRの精製に成功した.ヘムを捕捉したHasAと強く相互作用するHasRのみを選別して精製しているため,HasRは機能を保持していると考えられる.各種分光測定から,HasAからHasRへとヘムが受け渡されていることも確認している.さらに,HasAとHasRの複合体の結晶の作製にも成功した.結晶サイズが非常に小さいために,X線結晶構造解析はできてはいないが,結晶化条件の最適化により,HasRの蛋白構造を明らかにできると考えている.また,鉄イオンの少ない培地で菌体を培養することでヘムの生合成を抑え,ヘムを持たないHasRの精製も検討しており,20%程度までヘムの含有割合を下げたHasRを精製することができている.このHasRに鉄フタロシアニン有するHasAを作用させると,強く相互作用することも見出した.また,緑膿菌の増殖阻害実験に関しては,フタロシアニンだけでなく,鉄ジフェニルポルフィリンを有するHasAを用いても緑膿菌の増殖を阻害できることを確認している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑膿菌のヘム獲得蛋白質HasAの受容体であるHasRは,2015年に単離精製されたとの報告があるが,ヘムとの相互作用の吸収スペクトル変化が明確でないことやHasAと相互作用しないことなどから判断して,きちんと折りたたまれた機能のある状態で単離されていないと考えられる.一方で我々は,蛋白質の発現条件を大幅に変更することにより,少なくともヘムを有するHasAや鉄フタロシアニンを有するHasAと強く相互作用するHasRの単離に成功している.さらに,HasAとHasR複合体の結晶化にも成功している.結晶は,非常に小さい微結晶であり構造解析に耐える質のものではないが,高純度の機能を保持したHasRを精製できていることを示唆している.現在,結晶化条件の最適化を進めており,研究課題終了までには,緑膿菌のHasRの結晶構造解析を完了できると考えている.また,すでに鉄フタロシアニンHasAとHasRの調整にも成功しており,金属錯体の違いによる緑膿菌の増殖阻害を原子レベルで明らかにすることができると考えており,おおむね順調に研究が進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
緑膿菌のHasRとHasA複合体の結晶化条件の最適化を進め,蛋白質結晶構造解析が可能なレベルの結晶を作製する.また,ヘムを持たないHasRを単離精製することで,合成金属錯体を有するHasAとHasRの相互作用と金属錯体の構造の相関を明らかにし,なぜ,鉄フタロシアニンを有するHasAが緑膿菌の増殖を抑制できるのかを明らかにする.さらに,結晶構造解析により,HasRに鉄フタロシアニンがどのように取り込まれるのかを明らかにする.HasAとHasR複合体の結晶構造解析とHasAとHasRの相互作用解析のデータを元にして,鉄フタロシアニンよりも,高効率に緑膿菌の増殖を阻害する金属錯体を設計・合成し,より低濃度で機能する緑膿菌増殖阻害剤を開発する.さらに,これまでに得られたガリウムフタロシアニンを有するHasAによる緑膿菌の光殺菌と組み合わせることにより,短時間の光照射で緑膿菌を殺菌できる人工金属蛋白質の開発へと繋げる.光殺菌の実験では,HasRを欠損させた緑膿菌を利用することで,HasAとHasRの相互作用を確認しながら,条件検討を進め,可能であれば,鉄キレータを用いない条件での高効率な光殺菌を実現する.
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Remarks |
名古屋大学大学院理学研究科生物無機化学研究室 http://bioinorg.chem.nagoya-u.ac.jp/
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