2014 Fiscal Year Annual Research Report
生体系固体NMRの高感度化-光を使った汎用法の確立
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26708019
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松木 陽 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (70551498)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動的核分極法 / 固体NMR / 光励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
常磁性ラジカル種の電子から核に分極を移す「従来の動的核分極法」に基づいたNMR感度向上法に対し、光励起した過渡的ラジカル種を用いる新手法を立ち上げるのが目的。ありふれた小分子(色素など)だけからなる「分極剤」を設計、合成し、汎用法の確立を目指す。 1. 光励起フラビンに発生したスピン分極を高周波マイクロ波照射(~400GHz)によって核に移動するNMR実験を行ったが、移動が観測できなかった。これに基づき次を実行することを決めた。(1)マイクロ波の周波数と出力の最適条件探索。(2) LED光源より強い、レーザー光源の導入。(3)色素単体でなく、分子内で電子移動を起こして励起電子の再結合を防ぐ手を考える。つまり電子受容体-供与体の「複合分極剤」を設計、合成する。 2. 高出力レーザー光源を選定、購入した。高出力光をNMRプローブ中の試料まで導入する経路には新たな改造が必要と判明、実行した。 3.複合分極剤の設計と合成では複数のアプローチを試みた。(1)分子の自己集合能(ミセル化)を利用する方法。ヒスチジン-PEGとトリプトファン-PEGを合成、フラビン-PEGと共に透明なミセルの形成するプロトコルを確立。蛍光測定で確かめた。NMR測定に移る。(2)フラビン-PEGミセルに疎水的電子受容体をドープする方法。Tyr(溶解度0.05g/100g), indole(0.19g), n-acetyl Tyr ethylester (0.5g)などのドープを試みた。NMR測定に移る。(3)電子供与体と受容体を直接共有結合した分極剤の有機合成。フラビン-イミダゾールを合成。フラビン-インドールの合成が進行中。NMR測定に移る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に沿って分極移動実験と、分極剤の設計と合成を行った。分極剤の創出に関しては、3つのアプローチを同時に遂行しており、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りフラビン系分極剤の設計合成を進めると同時に、今年度はアセン系、ピレン系、ポルフィリン系などフラビン以外の色素群に手を広げて、分極剤の設計合成、分極移動実験を進める。
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Causes of Carryover |
今年度狭帯域レーザーを導入し、光を試料に伝送するためNMRプローブの改造を行った際、高出力光の伝送には予想以上の改造と、それに伴うレーザー伝送用その他の部品が要ることが判明した。H27年度は広帯域ランプの導入を計画しており、同様の問題で追加の出費が予想できる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
広帯域ランプの購入と伝送系の確立に支出する。
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