2016 Fiscal Year Annual Research Report
Unusual electrolyte properties of concentrated organic solutions within a crystallinity gap
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26708030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 裕貴 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30598488)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電気化学 / リチウムイオン電池 / 電解液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、結晶化ギャップを発現するような超高濃度リチウム塩有機電解液に着目し、その新物性の探索及び二次電池電解液としての応用展開を目的とした。 平成28年度は、前年度までに明らかにした高電位におけるアルミニウム集電体の酸化溶解(腐食)の抑制機構に基づき、高電圧(5 V級)リチウムイオン電池に向けた新たな電解液設計の検討を行った。ともに弱カチオン配位性(弱ルイス塩基性)のリチウム塩アニオンと有機溶媒の組み合わせに着目し、更にそれらをモル比1:1に近い濃度まで高濃度化することで、アルミニウムイオンの溶解に寄与するフリー溶媒分子を排除した。得られた電解液は、リチウム基準5 V以上の電位においてもアルミニウム集電体の腐食を抑制できることが分かった。更に同様のメカニズムで、従来の電解液で問題となっていた高電位正極(スピネル型LiNi0.5Mn1.5O4)からのMnやNiの溶出も抑制できることも見出した。この電解液を応用することで、アルミニウム集電体に塗布した4.7 V級スピネル型LiNi0.5Mn1.5O4電極の可逆的充放電反応に成功した。また、この高電位正極と黒鉛負極を組み合わせた試作リチウムイオン電池においても高い充放電可逆性を得ることができた。 従来の電解液では、アルミニウム集電体を不動態化するためAlF3やLiFを生成するLiPF6塩を採用することが必須とされてきた。一方で、LiPF6塩は上記のような高電位正極からの遷移金属の溶出を促進してしまうという負の側面も報告されてきた。本研究で示した溶媒の配位状態制御に着目した電解液設計では、アルミニウムの腐食と高電位正極からの遷移金属溶出の双方を抑制することができ、高電圧リチウムイオン電池に向けた新たな電解液設計指針を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶化ギャップを発現する超高濃度電解液の基礎物性評価、アルミニウム酸化腐食抑制機構解明を完了し、既に見出している高速電極反応、高還元耐性に対しても機構解明が進展している。また、当初予定していた4V級を超えて高電圧5V級リチウムイオン電池への応用が有効であることも見出された。したがって、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で順調に進展しているため、今後も計画書の通りに推進する予定である。 本研究は、結晶化ギャップを発現する超高濃度有機溶液について、(1)異常物性探索、(2)異常物性の発現機構解明と知識体系構築、(3)それに基づく革新的二次電池の創製という、大きく分けて3段階で推進している。このうち、最終年度となる平成29年度は(2)についてまとめるとともに、(3)について重点的に行う。(2)については、実験・理論の両面から検討した高い還元酸化安定性と金属腐食抑制のメカニズムについて一般化・体系化を行う。(3)については、これまでに見出された高濃度電解液の特異性を活かし、既存のリチウムイオン電池に対し電圧・容量・反応速度の点で大きな優位性を有する新型電池系の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
特定の材料系におけるメカニズム解析を重点的に行ったため、材料及び電池評価系の購入費用が少額となったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、様々な材料系を用いた現象の一般化、及び見出した電解液系の電池への応用を重点的に行うため、材料及び電池評価系の購入費用として使用する予定である。
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