2014 Fiscal Year Annual Research Report
湾曲天然繊維の強化機構を利用した高強度グリーンコンポジットの開発
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26709003
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
野田 淳二 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (00398992)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グリーンコンポジット / 成形 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境親和性を備えた天然繊維強化複合材料(GC)は,輸送分野における構造材料としての利用が強く期待されている.天然繊維の破断ひずみはガラス繊維のそれと比べて大きいため,成形中に工夫することにより繊維の折損を防ぐことができる.本研究では,未折損の湾曲した長い天然繊維を多く含むGCの成形法を開発し,複雑な形態で樹脂中に内在する天然繊維の強化機構を実験的・解析的に明らかにすることにより,従来GC材よりも,高強度を有する新規GCを開発することを目的とした.平成26年度は,麻の生育地である温暖な東南アジア地域の発展途上国でのGC成形を意識して,廉価な単軸押出機をベースとした新たな射出成形用GCペレット成形技術を開発した.本研究で開発した多重ピン補助樹脂含浸法は,被膜技術と多重ピン含浸工程を複合した独自技術であり,ピンの数や間隔を工夫することで樹脂の繊維束への含浸性を制御できる特徴をもつ.結果としてペレット内の気泡発生が抑えられ,平均繊維長が1mm程度の天然繊維を含有するGC材の創製が可能になった.成形したGC材内部の300本の繊維形態を観察した結果, ①湾曲繊維群,②屈曲繊維群,③湾曲と屈曲を有する繊維群が観察された.湾曲繊維群では,曲率半径が0.5mm以下の鋭利な湾曲を示す繊維が80%を超えていること,曲率半径と繊維長には相関がないことがわかった.一方,屈曲繊維群では,繊維長が0.6mmを超えると屈曲しやすくなることがわかった.以上から,高強度化を可能とする湾曲天然繊維を有するGC材内部の繊維形態の特徴が明らかになり,湾曲繊維GC材の高強度化メカニズムの解明に資する基礎データの取得が行えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,単軸押出機をベースとし被膜技術と多重ピン補助樹脂含浸法を組み合わせた長繊維GCペレットの成形装置を開発した.本手法により得られたGC材の引張強度は,繊維含有率5%で40MPaを超えており,さらなる高繊維含有率にて目標である60MPaが達成される見込みである.これにより環境負荷の高いガラス/PP複合材料射出成形品に匹敵する強度が得られ,環境親和型材料の開発が大きく進んだ.平成26年度に交付された予算にて購入したデジタルマイクロスコープを用いて,湾曲繊維を含む繊維形態を詳細に調査した.本調査により,湾曲繊維GC材の高強度化メカニズムの解明に資する基礎データの取得が行えたため,今後はデータベースの充実を図る. また,交付時に購入予定であった200cc二軸混練装置であるが,申請時に中古品の見積を手に入れ購入を検討してきた.しかし,価格が折り合わず予算内での購入が困難となったため,山口大学内で装置を製作することとした.現在,シリンダー,スクリュー固定部,駆動系等,装置の8割の部品製作を終了している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に開発した長繊維GCペレット創製装置とそれにより作られた射出成形品の繊維形態等の知見を基に,本年度は,以下の研究を遂行する. まず,湾曲した繊維群がGC材の成形中に多く発現する機構を明らかにする.射出成形中の樹脂流動における高せん断ひずみが生ずる側面効果に着目し,試験片断面において側面近傍や中央部において,繊維の湾曲の程度が異なる可能性を調査する.屈曲繊維群については,繊維長が長くなるほど屈曲する確率が高くなるので,今後は試験片寸法を大きくするなどの検討から,繊維長と屈曲繊維の発現機構の関係を調査する.これらのデータベースの充実化を図りながら,高強度発現機構の主要因と考えられる湾曲繊維と屈曲繊維の樹脂中の力学挙動について数値解析手法を駆使して明らかにする.さらに,同等の繊維長分布,繊維含有率を有し繊維が湾曲していないGC材と比較するため,ホットプレスにより作成する未湾曲GC加圧成形材の力学挙動も調べ,湾曲繊維の効果を調査する. また開発中の単軸押出機については,今後制御系と材料送り装置を構成して完成となるが,この単軸押出機をベースにペレット内天然繊維撚糸の解撚が行えるよう改良を加え,より長繊維化したGCペレットの開発を引き続き行う.なお,申請時に検討を予定していた衝撃試験は,新規に衝撃試験器を購入せずに,山口県産業技術センターの開放機器を利用することにより実施する.
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Causes of Carryover |
平成26年度交付時に申請し購入予定であった200cc二軸混練装置は,中古品の見積を申請時に入手し購入を検討してきた.200cc二軸混練装置は小容量のためラボレベルで混練が制御でき,各種の検討実験に有効であるが,非常に高価な装置のため中古品でも買い手が多い.申請した予算内で,ペレタライザー等の周辺装置も含めた購入を検討したが,価格が折り合わず購入が困難となったため,中古品での購入を断念して次年度使用額が生じた.これを解決するために,単軸押出機を改造して長繊維化GCペレット成形装置を開発する計画に変更した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在稼働中の単軸押出機を改造すると本研究の遂行に支障を来すため,この押出機の設計をベースに新たに押出機を自作する計画とした.現在までに,500,000円程度を使ってシリンダー,スクリュー固定部,駆動系等を自作し,これに制御系を組み込んで平成27年度には稼働する予定である.平成27年度は,そのためのパーツ,加工費等を計上する.また,GCペレット成形に関して,天然繊維は不連続で低比重のために,定量フィードが難しく,GC専用の材料送り装置の開発が求められている.材料の定量送り装置の開発は欧州の地域で活発に検討されており,頻繁に情報収集・調査を行う必要があるため,国内および外国旅費を計上する.
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