2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26709004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長藤 圭介 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50546231)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超精密金型転写 / 高速組立成型 / マイクロ・ナノデバイス / トライボロジ― / ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ナノ構造型表面をレーザで直接加熱することを利用して超高速でロール連続転写する技術を開発することである.熱ナノインプリントでは,樹脂表面に金型をプレスし,加熱・充填・冷却・離型を行う必要がある.従来のロール熱ナノインプリントでは,短い接触時間でこのプロセスを実現することが困難であった.レーザの局所加熱を用いることで,最低限の入熱で高速成形が可能となる.成形パターンに応じて,最適なレーザの照射条件や樹脂送り速度は異なる.深さ方向の熱伝導速度や加熱された樹脂の流動速度がトレードオフになる現象に至るからである. 当該年度において,申請書の目標は,主に以下の2点である.1.ロール転写装置での基礎的実験,2.各パラメータが転写に与える影響.それぞれにおいて,具体的な実績を報告する. 1.幅100 mmの金型が設置可能なロール成形装置を設計・製作し,ガラスロール越しに100 Wのレーザを集光照射し,厚さ75μmのアクリル系光学樹脂表面にサブミクロンパターンを転写することに成功した.さらに幅150nm,高さ300nmの反射防止構造を幅100mmで転写し,低い反射率を実現した.さらに10μmスケールの光取出し構造の転写にも成功している. 2.パワー密度と照射時間が転写速度(時間あたりの転写面積)に与える影響を調べた結果,パワー密度が高く照射時間が短いほど,転写速度が速いことが分かった.さらに10μmスケールの光取出し構造の転写においては,実験的にも最適条件があることがわかった.これは,1次元非定常熱伝導モデル解析を行うことで,定性的に証明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度では,主に1.ロール転写装置での基礎的実験と,2.各パラメータが転写に与える影響が遂行内容であった.それぞれにおいて,申請時の計画よりも進んでいる内容を述べる. 1.計画では,幅100 mmの金型が設置可能なロール成形装置を設計・製作し,ガラスロール越しに100 Wのレーザを集光照射し,アクリル系光学樹脂表面にサブミクロンパターンを転写,さらに反射防止構造を転写する基礎実験を行うことであった.アプリケーションとして,ディスプレイ用反射防止構造のみならず,太陽電池用反射防止構造,回折格子,さらに照明用光取出し構造の転写に成功した点が計画以上の実績である.また転写実証のみならず,太陽電池の性能向上評価,光取出し構造の古典光学計算および実験を用いた発光効率向上評価も行った. 2.パワー密度と照射時間が転写速度(時間あたりの転写面積)に与える影響を調べる点で計画通りであるが,10μmパターンの転写において,サブミクロンパターンでは律速にならなかった樹脂の流動速度やパターン深さ分の熱伝導が支配的であることを見出し,さらに,1次元非定常熱伝導モデル解析を行うことで,定性的に裏付けを行った点で計画以上に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は全2年で遂行するものであり,第2年次の2015年度の推進方策を下記に記す.初年次の2014年度では,100nmスケールの反射防止構造および10μmスケールの光取出し構造のレーザ表面加熱ロール成形に成功した.また,一次元モデルを用いた非定常熱伝導を行うことで,加熱・冷却時の深さ方向の熱伝導速度を見積り,成形速度の定性的な理解ができた.2015年度では,大きく以下の4つを推進方策として取り組む.1.実験系における改良とパラメータ最適化,2.光学シミュレーションを用いた微細構造解析,3.三次元熱伝導解析,4.樹脂流動解析. 1.レーザパワーだけでなく,照射径を変化させかつ微細構造の接触範囲のうち,上流域のみに照射するなどで,微細構造の形状の違いによる最適な照射条件を調査する. 2.反射防止構造は,幅100 nm高さ200 nmの円錐形状が林立したものであるが,実際に成形した構造がどの程度の要求仕様なのかを明らかにするため,光学シミュレーションを用いる.また光取出し構造に関しては古典光学解析を用いることで,要求される転写率の閾値を明らかにする. 3.2014年度での,1次元モデルの熱伝導解析を拡張し,2015年度では3次元モデルを導入することで,レーザのスキャンを模擬することを試みる.また樹脂と金型の接触面の接触熱抵抗を,4.の流動解析を元に,時間および温度の関数とし,より精度の高い熱伝導現象の予測を行う. 4.本研究で主に用いているアクリル系の光学樹脂は,ガラス転移点を超えると直ちに2桁以上粘度が下がると言われている.ところが,レーザ表面加熱の条件においては,樹脂表層で大きな温度勾配ができていること,熱伝導現象が高速であることの2点の理由で,平衡状態の樹脂モデルが適用できない可能性がある.そこで,粒子法を用いて,樹脂表層の局所的な流動現象をモデリングする.
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Causes of Carryover |
試作予定であった反射防止構造の金型原版が共同研究先から支給されたことで,予算使用が不要になったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
熱伝導および樹脂流動現象解明のための金型試作を新規に行うことにする.熱伝導・樹脂の流動は,金型の微細構造に大きく依存する.たとえば,金型微細構造の凸部の凹部に対する面積比が大きいほど,初期の接触熱抵抗が大きく,金型微細構造の大きさが大きいほど,樹脂の流動速度が転写速度に影響する.この結果を粒子法計算と比較するため,微細構造の凸部と凹部の比やサイズを変化させたものを試作するのに使用する計画である.
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