2015 Fiscal Year Annual Research Report
分子論と連続体をつなぐ新たな流動計測理論と相似則の確立
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26709008
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
花崎 逸雄 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10446734)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱揺らぎ / Langevin方程式 / 摩擦係数 / 流動抵抗 / 射影演算子法 / TIRF顕微鏡法 / 固液界面 / 吸着脱離 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に分子流体力学の視点からBrown運動に関してLangevin方程式の枠組みを超える現象を発見した(J. Chem. Phys., vol.142, 104301, 2015)ことを踏まえ,本年度はさらに原子・分子レベルの流動抵抗が従来のマクロな流体力学におけるStokesの抵抗則と差異を生じうることを発見し,その法則性を明らかにした(J. Chem. Phys., vol.144, 094503, 2016).この知見は,水中のイオン流動など多くの場面に関係するため,電気泳動,電気浸透流,熱泳動,イオン液体,Paulトラップ,流動抵抗低減技術,一分子計測などの多様な技術開発に寄与し得るものである. 一方,当該年度にはTIRF顕微鏡技術で観測した固液界面近傍におけるssDNA分子のBrown運動に関する一分子追跡データから吸着支配の挙動とそうでない分子の拡散挙動を識別する手法を開発した.固液界面近傍のBrown運動では,吸着支配な個体が含まれていると単純に全てを平均しては著しく拡散係数を小さく評価することになる.現実的には吸着を完全に防ぐのは極めて困難であるが,吸着している個体の識別は容易ではない.なぜなら,吸着している分子も熱揺らぎにより僅かな変位を時々刻々示すこともあり,吸着していながらも継続的に拡散している場合すらあるからである.さらに,吸着状態と非吸着状態との間を遷移することもあり,吸着していない分子も時として小さな変位を示すこともある.これに対して,新しい手法(Jpn. J. Appl. Phys., vol.54, 125601, 2015)では,指標や尺度を変え条件を的確に定義することにより,事前の知見や閾値を用いずに軌跡データ群から吸着支配の挙動とそうでない表面近傍拡散を定量評価することを可能にした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は途中で所属機関の変更に伴う様々な業務が発生したことにより通常よりも研究遂行に対する難易度が高まっていたことを考えると,論文出版など進捗はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
助教の立場から所属機関も変わりテニュアトラック特任准教授になったことにより,ゼロから研究室を立ち上げる作業を昨年の異動後鋭意進めてきた.本年度はそのような基本的な整備を終えた環境で,昨年度よりも実験計測に重点を置いて計測データ解析技術開発を一層進める方策である.
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Causes of Carryover |
年度の途中で,一研究室に所属する助教から,他大学でテニュアトラック特任准教授として自ら研究室を主宰する立場になり,立ち上げ作業などで研究活動のスケジューリングに変化が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験作業に必要な物品類の購入を中心にバランスよく使用する計画である.
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