2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26709027
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
揖場 聡 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス研究センター, 研究員 (90647059)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スピン / 円偏光 / LED / レーザ / 磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子のスピン自由度を利用した半導体レーザ“スピンレーザ”は円偏光のコヒーレント光を出力できるため、次世代の偏光多重通信や量子暗号技術、更には、キラル分子認識技術やディスプレイ、不揮発性光メモリなど広範囲に応用できる可能性を秘めており、その技術発展が期待されている。本研究では電流注入型スピンレーザの実現を目指して、コア技術であるスピンLED構造を用いた電気的スピン注入/検出法を確立する。
高い円偏光を有するスピンLEDを作製するためには、磁性電極部と半導体部の両者を適切に設計することが重要である。半導体部におけるスピンから円偏光への変換効率はスピンLEDの円偏光度を大きく左右する。そこで平成26年度は半導体部に着目し、量子井戸の結晶成長条件がスピン-円偏光変換効率および円偏光度に与える影響を評価した。ここでは一般的な半導体材料であるGaAs(100)基板を使用し、成長条件(成長温度および砒素・ガリウムのスラックス比)を系統的に変えてGaAs/AlGaAs量子井戸構造を作製した。試料のキャリアおよびスピンダイナミクスは時間分解フォトルミネセンス法により室温において測定した。キャリア寿命は成長条件に依存して0.4 nsから9 nsまで大きく変化した。一方、電子スピン緩和時間は成長条件によらず約0.1 ns程度で一定の値を示した。これらの値を用いて計算した結果、スピン-円偏光変換効率は成長条件により1桁変化し、実際に測定した円偏光度もこれに応じて変化することが分かった。これらの成果は高い円偏光度を持つスピンLEDの実現へ向けて重要な知見であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
半導体結晶成長装置が故障し、当初予定していたGaAs(110)結晶成長条件の最適化に遅延が生じているため。
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Strategy for Future Research Activity |
室温において1 ns以上の長いスピン緩和時間が期待できるGaAs(110)量子井戸を作製し、高い円偏光を有するスピンLEDの実現を目指す。
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Research Products
(3 results)