2014 Fiscal Year Annual Research Report
シャノン限界に迫る低計算量な空間結合符号化変調方式の創出
Project/Area Number |
26709029
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
竹内 啓悟 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30549697)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 情報通信工学 / 情報理論 / 符号理論 / 符号化変調 / 空間結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は空間結合インターリーバをビットインターリーブ符号化変調(bit-interleaved coded modulation, 略してBICM)方式に応用した空間結合BICM方式を構築し、メッセージ伝搬に基づく反復アルゴリズムの復号性能を密度発展法により解析した。反復アルゴリズム自体は低計算量で実行可能であるが、その性能を記述する密度発展方程式は従来の空間結合系で扱われてきた方程式のクラスには収まらず、変調次数が高い場合には計算量の点で計算機を使った数値的評価でさえも困難な方程式となる。そこで、空間結合系の従来の解析手法を拡張し、低計算量で評価が可能な従来のBICM方式の特性のみを使って空間結合BICM方式の性能を評価する図式解析手法を考案した。さらに、空間結合に起因するレート損失の影響が無視できるような極限状況下でも、メッセージが誤りなくどこまでも伝搬するという「空間結合効果」が働くことを空間結合BICM方式の場合に数学的に証明した。 上記の研究と同時並行で、空間結合BICM方式の有効性を確認する最初の取り組みとして、単純な無線通信システムに対して、空間結合BICM方式の従来法に対する優位性を検証した。具体的には狭帯域無線通信システムの理想的な数理モデルとしてブロックフェーディング通信路を仮定して、同時通信路推定・復号問題に空間結合BICM方式を適用し、理論的かつ数値的に従来のBICM方式に対する提案手法の有効性を実証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に実施を予定していた研究はすべて計画通りに進み、査読付き学術論文が1件、情報理論の分野で最も権威ある国際会議であるIEEE Int. Symp. Inf. Theoryの査読付き国際会議論文が1件という成果を得た。さらに、平成27年度に実施を予定していた研究内容の半分についてもすでに着手し、問題解決の見通しが立っている。 一方で研究の進展により、理論的検討を研究開始当初に予定していたレベル以上に深く行うことが、研究の目的を達成するために重要であることが判明した。そこで、平成27年度は当初予定していた研究計画に加えて、理論的な検討も追加で実施する必要がある。 以上から、研究は当初の計画以上に進展しているとまでは言えず、おおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度の項目に記載した通り、空間結合に起因するレート損失の影響が無視できるような極限状況下でも、誤り伝搬が生じないという「空間結合効果」をより深く理解することの重要性が研究の進展により判明した。そこで、今後は当初の計画に加えて、空間結合効果の数理的側面の解明にも力を注ぐ。 具体的には、空間結合BICM方式を含む一般的な空間結合系を出発点として、空間結合効果がなぜ働くのかを解明する。従来の空間結合に関する研究は、空間結合効果が働くことの厳密な証明を与える研究、あるいは空間結合効果が働くことの直観的な理解を与える研究のどちらか一方に限られていた。本研究では、両者の隔たりを埋める厳密な証明を与えることによって、なぜ空間結合効果が働くのかを厳密かつ直観的に説明することを目指す。
|
Causes of Carryover |
採録が決定した論文1件の掲載が平成27年度になったため、当該論文の掲載料に一部充てるための次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費の主要部分として、提案方式の有効性を確認するための数値実験を実施する目的で、当初の計画通り高性能計算サーバー1台の購入を予定している。また、本研究の成果を発表したり、本研究を推進する上で有益な情報を収集したりするために参加する国内外の学会等への出張旅費の他、当該学会への参加費や得られた研究成果を公表するための学術論文の掲載料に使用する予定である。また、人件費の主要部分は当該科研費に関わる事務の補佐を行う人員を雇用するための人件費に充てられる。
|
Research Products
(6 results)