2015 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオーム解析を中心とした化学酸化処理によるウイルス不活化メカニズムの解明
Project/Area Number |
26709037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅田 安廣 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60610524)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 病原ウイルス / プロテオーム解析 / 化学酸化処理 / ウイルス不活化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,プロテオーム解析を用いて化学酸化処理によるウイルス不活化メカニズムを明らかにすることを目的としている。 平成27年度では,プロテオーム解析を行う上で重要となる2次元電気泳動によるタンパク質分離に関する実験条件を検討した。特に高濃度のウイルスを得るために感染させた細胞のタンパク質成分や電気泳動に影響する化学成分の除去・精製が重要であることから,除去・精製方法について検討を行い,塩化セシウムと超遠心分離を用いた精製方法が感染価を失わないという観点からも最も有用性があると判断した。 続いて,アデノウイルスF群を用いて化学酸化処理として塩素処理,オゾン処理,紫外線処理を実施し,qPCRによる遺伝子損傷,PMA-qPCRによる遺伝子ならびに膜損傷を確認したところ,塩素,オゾン処理ではPMA-qPCR結果の方がqPCRの結果より大きく減少していることが確認された一方で,紫外線処理では共に同様の減少傾向を示していることが確認できた。この実験で得られた不活化状況に基づいて,アデノウイルスタンパク質の変化を2次元電気泳動で確認したところ,塩素,オゾン処理ではタンパク質のスポット移動ならびに消失が多く確認された。紫外線処理については一部のタンパク質領域で変化が確認された。そして各処理による感染価の減少はqPCRあるいはPMA-qPCRの減少よりもわずかではあるが大きいことからも,一部のタンパク質損傷が不活化に影響する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況として,アデノウイルスについては化学酸化処理の単位処理による不活化メカニズムの推定について,ラジカルによる影響を除き,データが得られた状況である。ラジカルによる影響については平成28年度に実施する促進酸化処理の実験と組み合せて行う予定であり,その実験器具,方法の整備については既に行っている状況である。 一方でロタウイルスについては細胞培養によりプロテオーム解析が実施可能である十分なウイルス濃度が得られておらずプロテオーム解析が十分に出来ていない状況ではあるものの,手法としてはMS2ファージを用いてロタウイルスに適用可能なプロテオーム解析手法を構築しており,プロテオーム解析の準備は整っている。その際,MS2ファージのウイルス不活化メカニズムに関するデータは取得できている。 今後ロタウイルス,アデノウイルス共により高濃度の精製試料が今後必要となるが,その方法について詳しい研究者との連携がとれることから,今後の実験においてこの部分については解決可能であると予想される。 以上を踏まえて,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の課題としては、ロタウイルス,アデノウイルス共により高濃度の精製試料作製が挙げられる。その方法については詳しい研究者との連携がとれることから,今後の実験においてこの部分については解決可能である。 平成28年度は,平成27年度からの実験を引き続き実施し実験データを追加していくとともに、当初の研究計画通りに促進酸化処理に関するウイルス不活化効果とそのメカニズムについて推定する。促進酸化処理の種類として,オゾン/紫外線処理,オゾン/過酸化水素処理,過酸化水素/紫外線処理を行い,各処理における不活化能をICC-PCRによる感染能評価により把握する。そして,qPCR,EMA-qPCRに基づく各単位処理プロセスの不活化効果の把握とプロテオーム解析によるタンパク質構造変化の把握に関する江データを収集し,ウイルスの不活化メカニズムとその効果を推定する。最後にこれらの得られたデータを総括して,ウイルス不活化に最も効果的な複合処理プロセスを選定し,その不活化能を評価する。そして,ウイルス不活化に最も効果的な複合処理プロセスを提案するとともに,合理的な微生物不活化処理プロセスの選択に対する不活化メカニズム把握の重要性を指摘する。
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Research Products
(1 results)