2015 Fiscal Year Annual Research Report
木質系平面異種混構造の耐震設計に関わる技術的課題への方策
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26709039
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 義弘 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70644425)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 混構造 / 耐震性能 / 大規模木造 / 振動モード / 振動台実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、国内では環境負荷の低い木造建築を推進していくことでCO2削減を目指している。低層で平面的に大きい建物の場合、構造計画上や防耐火の理由から、建物の一部を鉄筋コンクリート造でコア化した「平面異種混構造」が有効である。しかし、その耐震設計の煩雑さと真の耐震性能が未だ検証されていないことから、普及には至っていない。昨年度は主に理論的アプローチにより、平面異種混構造における特徴的な地震力分布の評価式を導出し、本年度に実施する振動台実験の準備も行ってきた。本年度は、片側が剛強なコアに接続された3層3スパン木質構造の試験体の振動台実験を行い、その動的挙動を把握した。 試験体は1/3縮尺で製作した木質耐力壁構造であり、片側を鉄筋コンクリート造コアを模擬した鉄骨治具に接続した。加振は一方向とし、加振波はBCJ-L2波の時間軸を√3倍した模擬地震動を用い、最大加速度(PGA)が0.1g, 0.2g, 0.4g, 0.6g, 0.8gになるように基準化して順に入力した。試験体は、壁配置・床の釘ピッチを変動要因とした3体とした。計測項目は、各構面のせん断変形、加速度、壁・床のせん断力、合板ひずみ、ボルト軸力、接合部変形であり、大小様々な入力に対する地震力・変位・抵抗力の分布を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施した振動台実験において、壁を均等に配置した試験体では、概ね既往の理論通り、変位モードが正弦波形を示した。一方、中間壁が無い試験体では、中間部が膨らむような変位モードを示した。各階の木造部分およびコア部分における地震力の負担割合の比較においては、いずれの試験体も地震力の約60%をコア部分により負担できていた。壁を端部に集中配置した試験体では、他の試験体より壁枚数が少なくても、同程度の力がコアに伝達された。しかし、PGA0.8gのような大加振時には、壁が少ないことにより水平耐力が低く、塑性化の進行が早かったため、非線形化の影響を適切に考慮した評価法の必要性が示唆された。 i階より上の階に作用する地震力総和を、i階より上の木造部分重量で除して1階で基準化したせん断力係数(Ai分布)で比較したところ、全体的に最上階でも1.2程度までしか増幅しなかった。また、PGA0.4g入力時のベースシア係数は、5%減衰の一質点系では1.0になるところ、試験体No.1で0.65,No.2で0.92,No.3で0.75となった。試験体は概ね弾性挙動を示したものの、応答スペクトル値が示すほどベースシア係数は上昇しなかった。以上の傾向は、既提案の理論解とも整合しており、平面異種混構造特有の振動特性が実験的にも観察されたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平面異種混構造の耐震性能を決定づける鍵となる、各壁・各床の抵抗力分布やコアへの地震力伝達割合に着目すると、実験結果は既往理論の評価値に概ね一致したが、非線形領域では評価方法に改良を要することが示唆された。今後は等価線形化手法の適用を行い、非線形領域での精度改善を行う必要がある。しかし、従来の壁式構造のように、ある壁要素が降伏すると直ちに層崩壊型が形成されるわけではなく、その後もコア部分や床要素で地震力を負担できれば、見かけ上の保有水平耐力の上昇が見込めることが分かり、非線形領域も含めた設計法構築の見通しは立てられたと考えられる。 また、本研究では建物全体のマクロ挙動の把握に主眼を置いたため、実験において木造-コア部分の接合部はずれ変形が生じないようにしたが、地震応答時に接合部に生じる軸力・せん断力は計測できており、今後はこの計測値から、合理的な設計用応力を設定することを考えている。本研究で行った振動台実験と並行して数値解析による再現も実施しており、そのモデル化の際に必要なデータは、本研究で行った実験によりほぼ取得することができた。したがって、今後は得られた実験データを精査するとともに、数値解析的アプローチによりより広範なモデル・入力地震動での検討も行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度に実施した振動台実験で使用した鉄骨治具において、試験体重量と剛性を鑑みて部材数を減らし、簡略化を行ったところ、材料費および製作費を削減することができた。また、試験体に積載する錘を、鉄板ではなくコンクリートで自作したことも、予算の削減につながった。なお、これらの計画変更による研究成果への影響はなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究の総括として、平面異種混構造の耐震設計法の骨子を提案する計画であり、それに必要な要素実験を行う予定である。本年度に実施した振動台実験では、接合部に生じるせん断力・引張力を計測することができたが、そのような複合応力下での現実的な接合部の変形挙動を実験により再現できていないため、接合部挙動に着目した要素実験を追加で行う計画である。
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