2014 Fiscal Year Annual Research Report
鋼構造における溶接接合部の耐火性能解明と耐火設計法構築
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26709040
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
尾崎 文宣 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40434039)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 建築構造・材料 / 鋼構造耐火 / 溶接部 / 構造の火災応答解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1)耐火加熱炉の導入、2)火災応答解析による柱梁接合部の延性亀裂発生ひずみの定量化を実行した。 1)に関しては溶接部耐火試験の必須設備であり、代表者自らが設計して装置導入を完了した。載荷装置(引張試験機)との取り合い、設定温度、耐火炉内の変位測定法、耐火試験での汎用性を考慮して試験炉と制御盤の詳細を確定した。なお本年度の研究費の過半は当該設備導入に充てた。 2)に関しては、鋼架構の2次元非線形火災応答解析を実施することで、鋼架構の柱梁節点部の火災時弾塑性挙動を明らかにした。特に、今まで構造耐火分野では注目されてこなかった断面内温度勾配による引張熱応力に着目し、その引張熱応力が卓越する梁材端上フランジ部においては、火災時脆性破壊が発生する可能性があることを突き止めた。数値解析において火災時脆性破壊指標として延性亀裂発生ひずみに注目し、保有ひずみ(既往素材試験結果と既往解析結果を高温時に拡張することで決定)と必要ひずみ(本研究の火災応答解析から決定)を比較することで、延性亀裂が発生するときの部材温度、すなわち延性亀裂発生温度を求めた。柱梁接合部は上フランジが青熱脆化温度(100~400℃)に留まる場合が多く、これが延性亀裂を発生しやすくさせる1要因となった。また架構形態、荷重および加熱条件をパラメトリックに変化させ、火災時に脆性破壊が発生しやすい条件を特定した。梁に隣接した柱が火災に巻き込まれる場合において、当該柱に熱曲げモーメントが発生し、これが梁端部の上フランジの引張ひずみを進展させる結果が得られた。柱梁強度比が大きな場合(梁に比べて柱の曲げ耐力が大きな架構の場合)にその傾向が顕著となった。常温時の鋼構造では柱梁強度比を大きくする傾向にあるが、このような架構で火災が発生すると、この強い柱が大きく熱変形し、これが柱梁接合部に悪影響を及ぼすことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個別の課題については研究進捗にばらつきが見られるが、課題全体では概ね順調に進捗している。 H26年度は耐火試験炉の設計・導入を目標とし、当初想定していた仕様を概ね満足できる耐火試験炉を導入できた。ただし電気制御盤の一部の部品納入が遅れたために、耐火試験炉の導入完了がH27年2月にずれ込み、このため本年度に一部予定していた溶接接合部の耐火実験が実施できなかった。他方、耐火試験体の仕様と計測方法に関しては前倒しで検討を行い、次年度実施予定の耐火試験にその検討結果を直ぐに反映できるようにしておいた。 火災応答解析による検討は、計画以上の進展が見られた。パラメトリックに火災応答解析を実施し、火災時に脆性破壊の可能性があることを把握し、これが鋼材の特徴的な高温時特性である青熱脆化現象と関連があることが明らかになったことは、本年度当初に想定していなかった研究成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)溶接接合部の耐火試験:温度一定・荷重漸増実験を実施し、これより耐火性能評価において最も基礎となる実験データ(溶接接合部の高温強度低下曲線、および高温耐力~変形関係)を得る。溶接部は、一般的に用いられるCO2半自動溶接を用い、完全溶込溶接の試験体を製作する。実験では、高温時における破断箇所の変化にも着目する。具体的には、温度上昇により再熱を受けた溶接部に対して、溶接金属部、熱影響部(HAZ)、母材部のどこが高温破断したかを調査する。また、青熱脆化域においても試験を実施し、脆性破断の有無、破断時の変形能力も明らかにする。 2)部材試験用の電気加熱炉の設計と導入:H28年度に柱梁溶接部の耐火部材実験を予定しており、本年度はその設計と導入を行う。部材レベルの耐火試験では、炉内に配置された試験体の変位測定が重要となり、変位計測のための耐火炉側面の開口部箇所とその大きさを慎重に検討していく。また開口部による熱流出と炉内均熱領域をバランスさせるように、炉内ヒーター箇所の検討も行う。
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Causes of Carryover |
H26年度に、実験計測機器としてデータロガーを購入予定であったが、耐火試験炉がやや予算超過となったために、当該データロガーが購入できず、その残金が発生した。 またH27年3月に国際会議に出張予定であったが、当予定がキャンセルとなったために、その残金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金については、H27年度にデータロガー購入資金に充填する。
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Research Products
(4 results)