2014 Fiscal Year Annual Research Report
歴史的な組積造・石造建造物の塩害進行予測のための実態調査と基礎的実験
Project/Area Number |
26709043
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
安福 勝 近畿大学, 建築学部, 准教授 (20581739)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 塩害 / 文化財保存 / 湿気 / 組積造建築 / 石造文化財 / ビザンチン建築 / 磨崖仏 / イスタンブール |
Outline of Annual Research Achievements |
・各調査対象(イスタンブールにおけるビザンチン建築、東南アジアにおけるショップハウス、大分県元町磨崖仏等)において、周辺の気象観測、降雨量分布計測、室内温度・湿度・気流分布計測、材料内の含水率分布の非破壊測定、塩害の経時変化の記録、建築材料および塩の試料採取などを実施し、現状の記録を行うとともに、数値解析のための基礎データを得た。測定結果とその分析結果について、その成果の一部を論文として発表した。また、同様の測定を現在も継続している。 ・実態調査でみられる代表的な塩:硫酸ナトリウム(Na2SO4)を含んだ各種材料(ALC、レンガ、モルタル、日華石、凝灰岩など)の平衡含水率を測定した。その成果から、結晶化した塩を含む材料の平衡含水率近似モデルを作成した。これにより、より広い含塩率範囲における平衡含水率の予測が可能になった。測定結果の一部と近似モデルを論文として発表した。更に、既に得られた結果を基に、塩を含んだ材料の吸放湿履歴モデル(拡張独立領域理論)を開発することが可能であるという知見を得た。 ・塩を含んだ材料(レンガ)の水分伝導率をガンマ線照射装置を用いて同定した。塩溶液の濃度と材料内で析出した塩分量に応じた水分伝導率の変化を明らかにした。純水と飽和塩溶液では約2倍の浸透速度差があること、また結晶化した塩を含む材料内部の浸透速度は、結晶化した塩を含まない材料内部のそれに比べ約6倍の差があることが明らかになった。この実験結果を論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・当初の予定を概ね達成している。 ・成果を既に十分に論文として発表している。また、さらに多くの論文を作成する見込みが十分にある。 ・成果を文化財管理者との対話、その他の研究者との研究会、関係者各位とのワークショップ等を介して社会に還元している。 ・また、当初想定していた以上の研究成果が得られる可能性も出てきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
・各調査対象において、周辺の気象観測、壁面上降雨量計測、室内温度・湿度・気流分布計測、材料内の含水率分布の非破壊測定、塩害の経時変化の記録、建築材料および塩の試料採取を実施する(昨年度からの継続)。 ・実態調査でみられる代表的な塩:硫酸ナトリウム(Na2SO4)を含んだ各種材料(ALC、レンガ、モルタル、日華石、凝灰岩など)の平衡含水率を測定する(昨年度からの継続)。さらに、既に得られた結果を基に、塩を含んだ材料の吸放湿履歴モデル(拡張独立領域理論)を開発する。 ・塩を含んだ各種材料の水分伝導率をガンマ線照射装置を用いて同定する(昨年度からの継続)。さらに、昨年度同定した塩溶液の濃度と材料内で析出した塩分量に応じた水分伝導率の変化をモデル化する。
|
Causes of Carryover |
・購入予定の物品(恒温恒湿器)の設置場所の準備が間に合わず、未購入の物品があるため。 ・調査期間が想定より短かったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
・購入予定の恒温恒湿器を購入する。 ・調査旅費として使用する。
|