2016 Fiscal Year Annual Research Report
古代東アジアにおける建築技術の重層性と日本建築の特質
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26709044
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
海野 聡 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 研究員 (00568157)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古代建築史 / 復元 / 発掘 / 中国 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、9月に中国山西省・南禅寺大殿・仏光寺東大殿などの唐時代の建築の調査をおこなった。具体的には組物や桁の位置に着目し、木材架構と組物・垂木の関係性について調査をおこなった。そのほか、吉備津神社・備中国分寺を訪れ、古代吉備の様子、特に国分寺を中心とした当時の先進地域の様相を探った。また国分寺に関しては、徳島を訪れて、阿波国の様相を検討した。 また中国において、美術史の国際会議CIHAに招聘され、日本の平城宮大極殿等における庭と庭における儀式と自然庭園的な苑池に関する発表を行い、東アジアにおける日本の空間の特質について、各国の研究者と討議を交わした。 また日本の地方に赴任した国司の住居である国司館について、万葉集に謡われた越中国の国司館について検討し、その成果を奈良時代の住宅建築と関連付けて、高岡市万葉歴史館にて発表を行った。 また同年12月には、「郡庁域の空間構成」というテーマで、第20回 古代官衙・集落研究集会を企画・運営し、「遺構からみた郡庁の建築的特徴と空間的特質」というタイトルで建築史学的な見地から発表を行い、考古学・文献史学らの研究者と郡庁という空間と建築について討議した。 また2017年2月には、申請時には想定していなかった挑戦的萌芽研究との連携が可能となり、古代建築の基本的な構造と復元の関係を述べるとともに、書籍『古建築を復元する―過去と現在の架け橋―』(吉川弘文館2017年2月)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に、一定の成果をまとめた著作を刊行することができ、また本年度も、当初想定されなかった科研の挑戦的萌芽研究との連携により、古代建築史の基礎と復元に関する書籍を刊行することができた。これにより、日本の古代建築と発掘遺構の関連性に関する一定の理解を得ることができた。 一方で、データベース化の作業については、申請時よりも科研費の直接経費が削減されたため、予算に見合った程度の進捗にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年にあたる。前掲のように、研究成果を含めた書籍を2冊刊行しており、かつ申請時よりも直接経費が大幅に削減されていることから、報告書の刊行は行わず、個別部分の研究の深化に努める。具体的には、東アジアにおいて、建築技術の交流の可能性のある小建築、特に瓦塔に関する研究を進める。同時に描かれた建築に関して、日中の描写で、どこに着目しているかに着目し、当時の人々の建築に対する認識という視点から、技術交流・伝播の可能性を模索する。この方向性の先には、往時における建築に対する認識という新たな研究テーマも見えてくることが期待される。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた人件費が研究アシスタントの事情により、勤務時間が減ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に研究アシスタントに追加で勤務してもらい、作業を進める。
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Research Products
(10 results)