2014 Fiscal Year Annual Research Report
磁場応答性ナノ粒子の開発と「磁気温熱療法と薬剤治療の一体化」による治療効果増強
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26709050
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
林 幸壱朗 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 助教 (80580886)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノ医療 / マグネタイト / スマートナノ粒子 / 磁気ハイパーサーミア / ドラッグデリバリー / コア-シェル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究目的は以下の三つである。(1)クラスター化したマグネタイトナノ粒子がコア、抗がん剤を含有したポリマーがシェルのコア‐シェルナノ粒子の合成、(2)このコア-シェルナノ粒子の構造解析および磁気・発熱特性評価、(3)このコア‐シェルナノ粒子の薬剤放出挙動の評価。 ポリマーナノ粒子内部でのマグネタイトナノ粒子の析出により、上記のコア-シェルナノ粒子を合成することに成功した。反応温度、反応時間、添加物の量を調整することにより、マグネタイトナノ粒子の結晶子サイズを制御することができた。また、対照材料として、クラスター化していないマグネタイトナノ粒子を合成した。 構造解析により、上記コア-シェルナノ粒子はクラスター化したマグネタイトナノ粒子がポリマーで覆われているおり、直径が直径60 nmであることが明らかになった。対照材料は、マグネタイトナノ粒子がクラスター化していないことを確認した。 コア-シェルナノ粒子と対照材料の磁気特性を評価したところ、コア‐シェルナノ粒子の方が飽和磁化、残留磁化、保磁力が大きいことが明らかになった。これはマグネタイトナノ粒子がクラスター化することにより、磁気双極子相互作用が増大したためであると考えられる。コア-シェルナノ粒子と対照材料に交流磁場を印加し、発熱特性を評価したところ、コア‐シェルナノ粒子の方が有意に大きかった。これはマグネタイトナノ粒子のクラスター化により磁気ヒステリシス面積が増加したためである。さらに、コア‐シェルナノ粒子と報告されている様々な磁性材料の発熱量を比較したところ、コア-シェルナノ粒子の方が大きいことが明らかになった。 また、このコア‐シェルナノ粒子に交流磁場を印加すると、コアであるクラスター化したマグネタイトナノ粒子が発熱し、ポリマーシェルが軟化し、抗がん剤が放出されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した抗がん剤とは異なる抗がん剤にはなったが、目的とする磁気ハイパーサーミアと化学療法を同時に達成する併用療法に資するナノ粒子の合成には成功し、平成26年度に行うことを計画していた実験計画を全て達成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
交流磁場に応答して発熱し、抗がん剤を放出するスマートナノ粒子の合成を予定通り平成26年度に達成することができた。このため、当初の研究計画に従い平成27年度は、がん細胞および担がんマウスを用いて、合成したスマートナノ粒子を用いた磁気ハイパーサーミアと化学療法を同時に達成する併用療法の治療効果を評価する。
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Causes of Carryover |
年度の途中で徳島大学から名古屋大学に移ったが、名古屋大学には当初購入する予定であった消耗品が保管されており、これを用いたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
徳島大学から名古屋大学に移ったことにより細胞培養の設備に不足が生じた。このため、不足している備品を購入する予定である。
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