2015 Fiscal Year Annual Research Report
析出物を用いた易加工性組織形成と高強度化による革新的マグネシウム合金圧延材の開発
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26709055
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐々木 泰祐 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主任研究員 (30615993)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 材料加工 / マグネシウム合金 / 析出 / 圧延 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度までの研究の結果から、Mg-Zn系合金が優れた常温加工性を示す材料として最も有望な系であると判断し、平成27年度はMg-Zn系合金に焦点を絞り、ランダム配向した結晶粒より構成される圧延材の開発に着手した。 前年度に行ったMg-Gdモデル合金の押出加工材の微細組織解析の結果から、Gdの微量添加が加工後の試料の結晶粒をランダム配向化する上で非常に効果的であることを確認した。そこで、Gdより安価で、かつ同様の効果が期待できるCe、Caを系統的にMg-Zn合金に添加した合金を作製し、圧延加工を行った。その結果、時効硬化による強化が期待できるようなZn濃度が比較的高濃度の合金の場合、CeよりもCaの添加が底面の集積度の低下により効果的であることがわかった。 次に、粗大結晶粒より構成される組織を有するマグネシウム合金は、加工中に双晶変形が容易に起こり、それを起点として生ずるクラックを主要因とした割れが起こるために圧延が困難となる。そこで、高温でも安定な析出物を形成し、圧延前の溶体化処理、および圧延中の粒成長を抑制が期待できるZr、Mnを微量に添加した材料をCaを添加したMg-Zn合金を作製した所、良好な圧延性を有し、かつ底面の集積度が低い圧延材を作製することができた。 上記の通り作製したMg-Zn-Zr-Ca合金を種々の条件にて圧延、溶体化処理を行い、底面の配向度や結晶粒径を色々に変化させた試料を作製し、強度、常温加工性をそれぞれ引張試験およびエリクセン試験によって評価した。その結果、マグネシウム合金としては極めて高いエリクセン値である7.5mmを達成した。以上の結果から、結晶粒径が10ー20ミクロン程度で、底面の集積度の低い再結晶粒組織を形成することによって、マグネシウム合金に優れた常温加工性を付与できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、マグネシウム合金としては極めて高いエリクセン値を有する材料の開発に成功し、本研究の中で最大の課題をクリアしつつある。今後時効特性、および強度評価を行い、高強度化に向けた組織制御を行えば目標は達成できると考えられるので、研究は順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、これまでに達成した優れた常温加工性の更なる向上を狙いながら、当初の計画通り、2次加工後の時効処理によって300MPa程度の0.2%耐力、15%以上の伸びを示す圧延材の開発に取り組む。 常温加工性のさらなる向上を達成するため、2次加工中の組織をEBSD、及びTEMを用いて精緻に解析し、優れた常温加工性を付与する上で重要な微細組織因子を解明し、圧延プロセス、および熱処理条件の最適化を図る。 また、目標とする強度を達成させるため、開発合金の時効特性の評価、および時効処理により形成される組織の評価を行い、時効による強化の可能性について検討を並行してすすめる。もし、分散する析出物が粗大で、時効による強化量が低いことが予想される場合は、更なる微量元素の添加、もしくは2段時効によって析出組織の微細化を図ることで問題を解決し、析出強化による強化量を最大限に向上させ、時効析出によって100~150MPa程度の強化が可能な合金を開発する。
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Research Products
(6 results)