2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26709060
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 広和 北海道大学, 触媒化学研究センター, 助教 (30545968)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオマス / キチン / グルコサミン / 触媒 / メカノキャタリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
キチンを効率的に解重合するための前処理方法を検討した。報告者らは、固体触媒と固体基質を混合粉砕すると接触が形成され、分解反応が著しく加速できることを見出している。そこで、各種固体触媒とキチンを回転ポットミルにより96時間混合粉砕した(基質/触媒比8.1 (wt/wt))。その結果、強いブレンステッド酸性を持つ触媒を用いると特異的にキチンが可溶化し、特にスルホン酸樹脂であるAmberlyst 15はキチンのうち76%を水に可溶の化合物に転換させることが分かった。主な生成物は2~5量体のキチンオリゴ糖であった。つまり、ボールミル処理中にキチンは部分的に加水分解され、水溶性を獲得したことが分かった。反応器内の温度は320 K以下であるため熱的な加水分解はほとんど進行しないため、本反応はメカノキャタリシスによって進行したと考えられる。ただし、Amberlyst 15もボールミル処理によって水に可溶化したため、固体触媒一般の利点である分離や再使用は困難であった。 そこで、より安価な液体の触媒である硫酸を用いて同様にボールミル処理を行った(基質/触媒比8.1 (mol/mol))。本処理により97%の可溶化が達成され、Amberlyst 15よりも良好な結果が得られた。以上の結果から、硫酸を触媒に用いることとした。 回転ポットミルは長い処理時間を要するとともに効率が低いため、ミル処理の効率化を検討した。その結果、遊星ボールミルを用いると処理時間を6時間まで短縮しても可溶化率>99%を達成できることが分かった。これは工業的なプロセスとして実施可能な処理時間である。 次に、ボールミル処理により得られた試料を463 Kで加メタノール分解した。本反応の触媒は試料中に含まれる硫酸である。その結果、1-O-メチル-N-アセチルグルコサミンが収率68%で得られた。硫酸のターンオーバー数は5.6であり、確かに触媒として機能した。これはN-アセチル化されたキチン単量体を人工的かつ触媒的に合成した初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、どのような固体触媒がキチンの分解に適しているのか明らかにすることを課題として挙げた。本研究では、強いブレンステッド酸がキチンの分解に有効であることと、その中でもAmberlyst 15が優れた活性を持つことを明らかにした。さらに、当初は予期していなかったメカノキャタリシスによるキチンの加水分解が起こることを見出した。 また、計画では1-O-メチル-N-アセチルグルコサミンを効率的に合成することを目標とした。従来技術では、まずN-アセチルグルコサミンを得るためにキチンに対して100等量の濃塩酸を用いる必要があった。さらに、N-アセチルグルコサミンをFisherグリコシド化しなければ当該化合物は得られなかった。しかし、本研究では酸の量を1/800の触媒量に低減し、直接加メタノール分解により1-O-メチル-N-アセチルグルコサミンを合成することに成功した。これは人工的かつ触媒的にN-アセチル化されたキチン単量体を合成した初めての例である。 以上のことから、当初の計画通り研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
キチンを固体触媒により加水分解水素化することにより、単量体であるアミノ糖アルコールの合成を試みる。本生成物はポリウレタンやナイロンの原料になることが期待できるほか、高い生体親和性を持つため医薬品の原料としても利用できる。 まずキチン分解用触媒を開発する。触媒には、加水分解活性と水素化活性の両方が必要である。申請者らは炭素担持白金触媒および炭素担持ルテニウム合金触媒がその両方の活性を持ち、キチンと類似の構造を持つセルロースの加水分解水素化に有効であることを既に明らかにしている。そこで、白金とルテニウムを中心に担持金属触媒をスクリーニングする。反応の律速段階は加水分解であると予測されるため、触媒の加水分解活性を高める目的で担体の炭素に含酸素官能基を導入する。炭素の酸化は常圧固定床流通式反応器を用いた空気酸化により行う。導入された含酸素官能基をBoehmの滴定により定量し、加水分解活性との相関を明らかにする。 キチンは難分解性であるため、直接的な分解は困難である可能性がある。その場合、まず触媒とキチンの混合ボールミル処理を行い、固体-固体接触を改善させる。これにより、固体触媒の活性を最大限に引き出すことができ、反応速度は10~100倍に加速すると期待できる。また、強酸を用いたメカノキャタリシスによりキチンをオリゴマーに変換する。キチンのオリゴ糖は可溶性であるだけでなく重合度が低いため、元々のキチンに比べると遥かに高い反応性を持つ。従って、本法を用いると固体触媒による分解が容易になるだけでなく、反応条件を温和にできるため選択性が向上すると考えられる。これらの二つの方法を利用して反応成績の向上を図る。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも高速液体クロマトグラフが安価に購入できたため、残額を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
貴金属触媒原料の購入費として使用する。
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Research Products
(10 results)