2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26709060
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 広和 北海道大学, 触媒科学研究所, 助教 (30545968)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 触媒 / バイオマス / キチン / N-アセチルグルコサミニトール / 含窒素化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
キチンは窒素を含むバイオマスの中で最も賦存量が大きく、効率的な化学変換が可能になればナイロンに代表される付加価値の高い含窒素化学品の原料になる。本年度はキチンの単量体であるN-アセチルグルコサミンが水素化されたN-アセチルグルコサミニトールの合成を試みた。N-アセチルグルコサミニトールはポリアミドやポリエステルアミドに変換できる可能性があり、またモノエタノールアミンといった汎用化学品に変換できる有望な中間体である。 キチンを機械的加水分解法により反応性の高いオリゴマーに変換した後、各種担持金属触媒を用いて130℃、3時間の条件で加水分解水素化反応を試みた。キチンと類似構造を持つセルロースの加水分解水素化においては炭素担持ルテニウム触媒が高い活性を示すが、本反応では基質や副生成物の被毒を受けやすく適していないことが分かった。一方、ジルコニアやチタニアを担体にしたルテニウム触媒は活性を示し、N-アセチルグルコサミニトールが収率10%で得られた。また、他の水素化に有効とされる触媒であるニッケルや白金は不活性であった。 そこで、チタニア担持ルテニウム触媒を選択し、反応条件を最適化したところ、N-アセチルグルコサミニトールの収率は22%まで増加した。収率は依然として低いが、キチンからN-アセチルグルコサミニトールを合成した初めての例である。副反応について分析したところ、競争反応として水素化分解や脱水環化反応が進行していることが分かった。これらを抑えることができれば目的化合物の収率を高めることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キチンからN-アセチルグルコサミニトールを効率的に合成できれば、含窒素化合物の新規合成ルートとなることから、この反応が可能であることを実証することを本年度の研究計画とした。研究実績の概要で述べた通り、機械的加水分解とチタニア担持ルテニウム触媒を組み合わせることにより、N-アセチルグルコサミニトールの合成に成功した。最近関連研究が専門誌に報告されたが、キチンを加水分解水素化しても当該化合物の収率は0.0%とされており、単離精製したN-アセチルグルコサミンを経ることが必須であった(Green Chem. 2015, 17, 1024-1031)。また、当該報告では水素化触媒担体に炭素を使用しており、その問題点にはまだ気付いていない。従って、報告者の研究は本分野をリードしており、進捗状況は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずキチンの加水分解水素化反応について検討を行う。現在の課題は水素化分解などの副反応が進行してしまい、N-アセチルグルコサミニトールの収率が低いことである。そこで、本年度は収率を向上させるため、以下の二つの改良法を試す。一つ目は、担持ルテニウム触媒を合金化し、その電子的性質と表面の幾何学を制御することにより副反応の抑制を図る。合金の具体的な候補としては、電子的な効果が期待できるコバルトやイリジウム、また幾何学的な効果が期待できるスズやビスマスが挙げられる。二つ目は、加水分解と水素化の過程を分け、それぞれに適した反応条件を採用することにより、副反応を抑止する。この二段階法の実施に当たっては、反応中間体であるN-アセチルグルコサミンを分離・精製してしまうと従来法である単純な組み合わせと大差ないため、ワンポットでの実施を予定している。 次に、触媒系の反応機構を検討する。まず、分光法や吸着法を用いて触媒のキャラクタリゼーションを行い、その物理化学的な性質を明らかにする。次に、副生成物を含めた生成物の分析と反応速度論により、キチンの加水分解水素化反応中に起こっている各過程を定量的に解析し、律速段階や副反応過程について明らかにする。得られた知見を元にモデル化合物を用いて対照実験を行い、反応経路を検証するとともに触媒の作用について詳細な知見を得る。以上の結果から、反応機構を推定するとともに、キチンを選択的に加水分解水素化するために必要な触媒設計指針を明らかにする。
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Causes of Carryover |
人件費が想定よりも低くなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
反応の実施に必要な貴金属試薬の購入に使用する予定である。
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Remarks |
本研究で開発したキチンの分解法は、化学工業日報およびAtlas of Science (http://atlasofscience.org/crab-shells-to-value-added/)にて紹介された。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Hirokazu Kobayashi, Atsushi Fukuoka2015
Author(s)
Catalytic conversion of inedible biomass
Organizer
The 45th Petroleum-Petrochemical Symposium of JPI, International Session
Place of Presentation
ウインクあいち(愛知県名古屋市)
Year and Date
2015-11-05 – 2015-11-06
Int'l Joint Research / Invited
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