2015 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界流体における熱力学物性・流体非線形相互干渉のダイナミクスと不確かさの定量化
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26709066
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河合 宗司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40608816)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 航空宇宙流体力学 / 数値流体力学 / 流体工学 / 超臨界流体 / 不確かさの定量化 / 乱流境界層 / 実在流体 / DNS |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、提案した超臨界圧・遷臨界乱流を高精度に解析可能な数値計算法を用いて急激な加熱壁により加熱される空間発展遷臨界平板乱流境界層のDNSを実施し、詳細な格子収束性を確認した上で、高精度なDNSデータベースを世界に先駆けて構築することに成功した。またDNSデータベースを用いた乱流統計量に関する解析を進め、遷臨界条件での強い実在流体効果に基づく非線形な熱力学物性変化により、理想流体の乱流境界層では見られない特異な乱流統計量や乱流エネルギーバジェット、また低速流でありながらMorkovinの仮定を上回る非常に大きな密度変動が境界層内に発生し、その密度変動効果がレイノルズせん断応力に影響を与えていることを明らかにした。
超臨界乱流境界層のRANS的内層モデリングでは、構築したDNSデータベースと同条件で既存のRANSモデルを用いた解析を行い、既存のRANS的内層モデリングの適用可能範囲および問題点を明らかにした。そこでは、超臨界流体であっても遷臨界条件でなければ、乱流境界層の乱流統計量は理想流体の乱流境界層のものと変わらず、既存のRANS乱流モデルで十分精度の良い予測が可能であることを示した。一方で、遷臨界条件となる超臨界乱流境界層では、既存のRANSモデルの予測精度は非常に悪化することも示した。現在その原因についての解析を進めているが、既存のRANSモデルでは密度変動の効果は通常無視されており、それが原因で遷臨界条件ではレイノルズせん断応力が過剰に見積もられるのではないかと考えている。またDNSデータの解析から、密度変動に関わるレイノルズせん断応力成分は負の値を持つことが明らかとなっており、密度変動の効果を適切にモデリングすることにより高精度な乱流境界層内層モデリングが提案できるのではと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題申請時に計画していたとおり、超臨界圧・遷臨界乱流境界層のDNSデータベースの構築に成功し、そのデータベースを用いた解析から今まで明らかになっていなかった遷臨界条件での強い実在流体効果に基づく特異な乱流統計量を明らかにした。また構築したDNSデータベースを基に、超臨界乱流境界層のRANS的内層モデリングに関する取り組みにも着手し、既存のRANSモデルの遷臨界乱流境界層に対する問題点を明らかにしている。現在、明らかにした問題点を基に、既存のRANSモデルでは通常無視される密度変動効果のモデル化に取りかかっている。また非線形な流体現象かつ複数の不確かさ変数にも適応可能となるようKriging理論に基づく不確かさの定量化法の高度化にも引き続き着手している。
以上から、2年目の終わりとしての研究達成度はほぼ順調であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
遷臨界乱流境界層内の大きな密度変動がレイノルズせん断応力に寄与する壁乱流構造にどのような影響を与えているか、乱流構造の側面から詳細なDNSデータベースの解析を進める。また並行して、実験的に計測されている遷臨界条件特有の特異な壁面熱伝達特性を世界に先駆けて再現し、その流体物理を解析するため、遷臨界温度条件を徐々にまたぐように徐々に加熱される空間発展超臨界乱流境界層のDNSを実施する。これらのDNSデータベースは、超臨界乱流境界層の内層モデリングにつながる知見となる。
超臨界乱流境界層のRANS的内層モデリングでは、DNS解析から明らかになった密度変動の効果のモデリングを試み、DNSデータと比較することでその有効性を検証する。また並行して、Kriging理論に基づく不確かさの定量化法の高度化とその検証を進め、時間が許せば密度変動効果のRANSモデリングが遷臨界乱流境界層にどのような影響を持つか定量的にその感度を解析するため、本不確かさの定量的評価法を用いたRANS解析を試みることを計画している。
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Causes of Carryover |
当初申請時よりも減額されていたため、来年度以降の消耗品に当てるため基金分を若干残している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度以降の消耗品に当てたい。
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Research Products
(7 results)