2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン修飾新規リーダータンパク質による転写機構解析
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26710013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神吉 康晴 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (00534869)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血管新生 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者が見出した新たなヒストン修飾変化に対する生物学的意義を解明し、その修飾が形成される分子機構、更に新規ヒストンリーダータンパクの同定を行う。申請者はこれまでに、血管内皮細胞を用いて次世代シークエンサーを用いた網羅解析から、血管内皮細胞活性化に寄与する転写因子、エピゲノム修飾を報告してきた(Kanki Y et al 2011 MCB, EMBO Jなど)。そこで、本申請では、内皮細胞にとって最も重要な活性化シグナルであるVEGF (Vascular Endothelial Cell Growth Factor)に着目し、その下流の分子カスケード解析から、より副作用の少ない新たなエピゲノム創薬の標的を探索することを目的としている。 平成26年度は、HUVECs(ヒト臍帯静脈内皮細胞)にVEGF刺激を行い、0分、15分、60分後のRNA-seq、ChIP-seq、FAIRE-seqのデータを取得した。ChIP-seqには、活性化マークであるH3K4me3、H3K27me3、H3K27ac、H3K9me3の抗体を用いた。その結果、RNA-seq解析から見出されている早期誘導転写因子群に特異的なヒストン修飾が存在することを見出した。 次に、これら特徴的なヒストン修飾を媒介する酵素の探索を行った。その結果、H3K4のメチル化を修飾するMLL3に結合する新規タンパクを質を同定した。このタンパク質の機能を阻害すると、血管新生は顕著に阻害された。更に、マウスを用いて腫瘍移植実験を行い、このタンパク質の発現を阻害するとコントロール群と比較して腫瘍の増大は抑制された。 本研究により、平成26年度は特にH3K4修飾に着目することで、血管新生に関与する新しいエピジェネティクス修飾因子を同定することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、平成26年度は、早期誘導遺伝子特異的なヒストン修飾に対して、H3K4me3、H3K27me3それぞれの意義を検討するものであった。H3k4me3に関しては、これまでの予備実験からMLL3の関与が示唆されていたが、本研究ではそのMLL3に加えて更にMLL3と相互作用するタンパク質を同定している。このタンパク質をノックダウンするとH3K4me3の修飾レベルの低下、遺伝子の発現低下の両者が認められることから、血管内皮のVEGF刺激下の早期誘導遺伝子に関するH3k4me3の役割解析は予想以上に進行した。 もう一つの修飾であるH3K27me3に関しては、これまでの文献からポリコーム複合体が関与していることが示唆されていた。本研究ではポリコーム複合体の1(PRC1)と複合体2(PRC2)どちらもその機能を阻害すると、血管新生阻害が引き起こされることを確認しており、こちらも当初の予想より進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果により、血管内皮細胞が活性化される際にはヒストン修飾酵素が重要であることが明らかとなった。ヒストン修飾酵素は血管内皮細胞のみならず、発生や分化、生活習慣病や癌などの病態にも深く関与している。将来の創薬を考える際に、正常細胞の機能は阻害せずに病的な血管新生のみを阻害するメカニズムを解明しなければならない。 そこで、ヒストン修飾酵素が血管内皮細胞内でVEGF刺激下でのみ形成する複合体に着目している。これまでの研究で、VEGF刺激した際に早期誘導される転写因子は20個程度であることが分かっている。これらの遺伝子座でのみ形成されるタンパク質、RNA、DNAの複合体が血管新生の鍵であると考えられるため、平成27年度は、EGR3やEGR2に着目して遺伝子座特異的な複合体解析を行っていく予定である。
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[Journal Article] Cross-enhancement of ANGPTL4 transcription by HIF1 alpha and PPAR beta/delta is the result of the conformational proximity of two response elements.2014
Author(s)
Inoue T, Kohro T, Tanaka T, Kanki Y, Li G, Poh HM, Mimura I, Kobayashi M, Taguchi A, Maejima T, Suehiro J, Sugiyama A, Kaneki K, Aruga H, Dong S, Stevens JF, Yamamoto S, Tsutsumi S, Fujita T, Ruan X, Aburatani H, Nangaku M, Ruan Y, Kodama T, Wada Y.
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Journal Title
Genome Biol.
Volume: 15
Pages: R63
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] GENETIC AND EPIGENETIC LANDSCAPE OF ENDOTHELIAL CELLS DIFFERENTITATION REVEAL THE TRANSCRIPTIONAL FACTORS NETWORK2014
Author(s)
Kanki, Yasuharu, Matsunaga, Taichi, Ryo, Nakaki, Yamamizu, Kohei, Shimamura, Teppei, Miyano, Satoru, Aburatani, Hiroyuki, Kodama, Tatsuhiko, Wada, Youichiro, Yamashita, Jun, Minami, Takashi
Organizer
International Society For Stem Cell Research the 12th annual meeting
Place of Presentation
The Convention Center, Vancouver, Canada
Year and Date
2014-06-18 – 2014-06-21
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