2015 Fiscal Year Annual Research Report
最大級のイオン濃度勾配を形成する胃プロトンポンプ作動機構の解明
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26711005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿部 一啓 名古屋大学, 細胞生理学研究センター, 准教授 (60596188)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胃プロトンポンプ / H,K-ATPase / P-type ATPase / 膜タンパク質 / 電子線結晶学 / 極低温電子顕微鏡 / 能動輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜輸送体の中でも最大級のイオン(プロトン)濃度勾配を形成できる胃プロトンポンプの作動機構の理解の為に、本年度は以下の成果が得られた。 (1)高親和性胃酸抑制剤結合構造:電子線結晶学により、胃酸抑制剤結合構造を解析し、以前よりも改善された6.5A分解能による解析を行い、立体構造を得ることができた。胃酸抑制剤非存在下の構造と比較することで、胃酸抑制剤の結合による構造変化を同定した。具体的には、胃酸抑制剤の結合に伴い、M3M4ヘリックスが外側に開き、これと連動してM1M2ヘリックスが阻害剤結合サイトに近づくという、TMヘリックスの再配向が明らかになった。 (2)胃酸抑制剤の結合状態に関する解析:上記(1)よりホモロジーモデルを作成し、変異体による胃酸抑制剤結合部位の検証を行った。構造変化を加味して作成したドッキングモデルにおいて、TMヘリックス2が結合している胃酸抑制剤に非常に近いことが示唆された。そこで、この部位に系統的変異導入を行い、胃酸抑制剤の結合親和性に対する影響を検討した。 TM2の片側に分布するアミノ酸(D137, N138)への変異導入によって、野生型と比較して20倍以上の親和性の減少を示した。これら変異導入による影響は、過去に報告された胃酸抑制剤の結合に関与すると考えられるアミノ酸の変異と同程度に多きなものであり、M2ヘリックスが胃酸抑制剤の結合に関与することが、機能的に検証された。 (3)哺乳動物細胞による大量発現系の構築:発現量やスケールを改良し、精製条件を最適化した。最終精製タンパク質は ~0.2 mg/1L culture程度の収率を与える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大量発現ー精製系の構築に成功した為。 胃酸抑制剤の結合構造に基づいた結合モデルが、変異体解析によって検証されつつあり、概ね正しいことが予想される為。
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Strategy for Future Research Activity |
高分解能構造解析を推進する。 組み替え体を用いた構造研究を展開する。 胃酸抑制剤の結合状態の検証をさらに推進し、合成した類縁化合物による結合状態の特定を目指す。
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Causes of Carryover |
大量発現系の維持の為に、インキュベーターが必要であるが、これが高額である為に次年度への経費の繰り越しが必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CO2インキュベーターの購入に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)