2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞系譜の後成的メカノケミカル制御機構を初期胚の顕微力学操作によって検証する
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26711009
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
板橋 岳志 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (20434384)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 顕微操作 / 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞分裂時に働く力は、細胞の運命決定、組織の形態形成など生物の形作りに必須の役割を果たすことが分子細胞生物学的観点から示唆されてきた。しかしながら、その力を直接操作して検証した実験の報告はない。本研究では、初期胚の胚全体もしくは特定の細胞の細胞分裂期を顕微力学操作によって制御し、形態形成への力の影響を定量化し、それに関わる主要な遺伝子の動態変調を時空間的に解析する。本研究の目的は、力学的環境の擾乱に対して、発生機構が備えるメカノケミカル制御・応答機構を顕在化し、プログラム化された機能遺伝子に支配される初期発生過程における“細胞分裂を制御する力”の役割を明らかにすることにある。以下に、得られた成果を箇条書きにする。 1.初年度、計画通りウニを用いて研究課題を開始したが、生殖シーズン(実験可能な季節)が限定されるなどの問題により、ライブイメージング・顕微操作する個体数・実験数が期待される以上に得られない問題に直面した。そのため、実験室で通年安定的に使用可能なクラゲを導入し、当初の計画を実施する実験系の確立を完了した。 2.顕微力学操作を行う2~32細胞期において、外部負荷の方向、細胞分裂のタイミングと分裂面を定量解析するため、細胞周期、アクチン細胞骨格及び微小管細胞骨格を4細胞期から幼生期までを通してイメージング可能な動態解析用タンパク質プローブをクラゲ用に改良・開発した。 3.動態解析用タンパク質プローブを顕微注射した4細胞期の初期胚において、細胞分裂時に外部負荷を加える顕微操作に成功し、顕微操作や動態イメージングの実験技術基盤を確立した。現在、外部負荷条件に対する発生様式と幼生の表現型を体系的に解析している。 4.後期紡錘体の力学特性及び染色体分配動態への影響を明らかにした。 5.後期紡錘体への力学摂動は染色体分配のみならず細胞質分裂へも影響を及ぼすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた実施項目について、計画通りにウニを用いて開始した。しかしながら、実験室において1年を通して状態良く実験に用いることが想定以上に難しいことがわかり、新たな実験動物の選定を行った。また、それに応じて、動態プローブの改良が必要となり、多少時間がかかったものの、実施目的の初期胚の顕微操作に成功し、研究内容を順調に達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度から開始している網羅的力学負荷条件に対する発生過程の応答性解析、応答性に関わる主要遺伝子の発現解析を継続する。
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Causes of Carryover |
本年度は、得られつつ研究成果の重要性を考慮して、海外での成果発表を控えたため、次年度への繰越研究費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究計画通りに研究費を使用する予定であり、加えて国内外での成果発表・発信を積極的に行う予定である。
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Research Products
(2 results)