2014 Fiscal Year Annual Research Report
地下生態系の「ブラックボックス」解明による群集理論の再検証
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26711026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東樹 宏和 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (60585024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生物群集 / 共生 / ネットワーク / 次世代シーケンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
植物と地下真菌の相互作用ネットワークを、次世代シーケンシングデータによる大規模解析で網羅的に明らかにしたアメリカ、ブラジル、オランダの研究者との共同研究が、Nature Communications誌で出版された(Toju et al. 2014 Nat. Commun.)。また、根内真菌同士の競争関係に関する次世代シーケンシング解析の成果(Yamamoto et al. 2014 PLOS ONE)も論文出版された。さらに、こうした一連の技術とその将来的な応用に関する総説論文を発表した(Toju 2015 Population Ecology)。 上記に加え、アメリカ、ブラジル、オランダの研究者との共同研究を継続中であり、ネットワーク構造の地理的な変異と統一性に関する論文を投稿した。また、共生ネットワーク構造のメタ群集レベルでの動態について、総説論文を執筆し、現在投稿準備中である。 植物と地下真菌の相互作用に関する空間明示的な数理モデルに関する共同研究も、重厚な野外データによる検証が進み、論文執筆の段階にある。 今年度はさらに、植物と地下真菌の共生ネットワークを大規模並列DNAバーコーディングを基に解明する基盤技術について、イルミナ社の次世代シーケンサーであるMiSeqを使ったよりハイ・スループットな基盤へと移行を進めた。これにより、得られるデータがこれまで使用していた次世代シーケンサーの100倍となり、また、塩基配列のデータ精度も大幅に向上した。この解析システムをニュージーランドのナンキョクブナ林で採取されたデータに適用したところ、従来の次世代シーケンサーによる解析では見えてこなかった詳細な相互作用ネットワークの構造が浮かび上がってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は実証研究の面で影響力のある総合誌をはじめとする科学誌での論文出版がなされたとともに、理論研究の面でも、共同研究が大幅に進展した。これに加えて、次世代シーケンシング技術による大規模並列DNAバーコーディングとその利用に関する総説論文を発表した。植物と地下真菌の共生ネットワークが地理的にどう変異するかに関する国際共同研究も、1報を投稿中であり、また、総説論文を現在執筆している。 次世代シーケンシングによる植物-真菌ネットワーク解析をイルミナ社シーケンサーを用いたシステムに移行することも成功した。この成果により、データの精度と量がともに大幅に向上し、従来の次世代シーケンサーを用いた場合よりもはるかに詳細なネットワーク構造の解明が可能になった。 以上の研究成果に関して、招待講演を行うとともに、大規模並列DNAバーコーディングを群集生態学に活用する技術に関して、書籍の執筆を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の成果によって、大規模並列DNAバーコーディングを用いた相互作用ネットワーク解析の技術が、精度とデータ量の両面で大幅に刷新された。この技術基盤をもとにして、様々な気候帯で採取されたサンプルの分析を進める。相互作用ネットワークのメタ群集レベルにおける動態をレビューする総説論文に関しては、共著者との連絡を密にして精緻な論理を構築し、影響力のある科学誌に投稿する。 理論研究についても、植物の種多様性決定機構に関する考察を深め、重厚なデータとともに論文化を進める。 さらに、26年度に構築した大規模並列DNAバーコーディング技術について、群集生態学上の応用の仕方をまとめた書籍の出版を目指して執筆を進める。こうした先端技術の群集生態学への応用に関して、招待講演の依頼もすでに受けているので、それらの機会を通じた普及を進める。 27年度は、国外研究者との共同研究をより本格化させる。実験生態学的な観点から微生物群集の動態を考察するため、国外の研究室に滞在して、共同研究を進める。
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Causes of Carryover |
今年度使用する試薬のうち一部のものについて、キャンペーン価格での割引価格が適用された。その一方で、来年度に大量に使用する予定の別の試薬が値上がりを続けており、上記の割引分はそのまま使用せずに、来年度の値上がり試薬購入に備えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
値上がりした試薬の購入に充てる。
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Research Products
(5 results)