2016 Fiscal Year Annual Research Report
地下生態系の「ブラックボックス」解明による群集理論の再検証
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26711026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東樹 宏和 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (60585024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生態系 / 種間相互作用 / 土壌 / 真菌 / 菌根 / 内生菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、国内外から注目される論文成果を多数送り出すことができた。植物と真菌の地下における相互作用に関する研究としては、高山帯の極限環境におけるエリコイド菌根共生に関する論文をMolecular Ecology誌に発表した。この論文の中では、16種のツツジ科植物間で共生真菌の群集構造を比較したが、エリコイド菌根菌以外にも驚くほど多様な系統の真菌たちが共生していることが判明した。また、この群集データをもとに植物-真菌ネットワークの全体構造を統計的に評価したところ、地上の植物-動物ネットワークで一般的にみられるネットワーク構造とは根本的に異なっており、昨年度にScience Advances誌で提起した地上と地下の群集構造の違いを支持する内容となった。また、複雑な群集の動態をより空間的に大きなスケールであるメタ群集レベルで考察する研究成果をNature Ecology & Evolution誌で発表することができた。この論文では、「超」種多様な生物間相互作用ネットワークを次世代シーケンシングで解明し、メタ群集レベルの相互作用網である「メタ群集ネットワーク」を推定することを提案している。メタ群集動態と進化動態とつないで種多様な現実の生物群集を考察する土台となる研究成果であり、両分野の研究者の相互作用を活性化していくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
28年度は、前年度に増して論文成果の公表を進めることができた。まず、大きな成果として、種多様な群集における進化過程と進化過程のフィードバック機構に関する今後の研究展開を解説するPerspective論文が、Nature姉妹誌のNature Ecology and Evolutionに掲載された。この論文は、"Species-rich networks and eco-evolutionary synthesis at the metacommunity level"というタイトルで、群集生態学と進化生物学をメタ群集レベル(空間構造を考慮)した上で統合することを目指す挑戦的な内容であり、世界トップレベルの群集生態学者と進化生物学者との息の長い共同執筆作業を本研究代表者がまとめた成果である。新しく創刊されたNature姉妹誌に掲載された日本人責任著者の論文ということで、解説記事やインタビュー記事が作成されている。上記の成果以外にも、土壌中における共生微生物間相互作用を扱った先駆的な論文など、国内外から注目度の高い論文成果を数多く出すことができた。また、本年度は招待講演6件や学会でのシンポジウム企画を通じて、本研究プロジェクトの視点を幅広い分野の聴衆に広めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの成果によって、栄養段階内の相互作用ネットワークや複雑な群集動態における空間構造の影響等について先駆的な成果を挙げることができたが、まだ出版すべき未発表データが残っている。最終年度は論文の成果発表に重点を置くという当初の計画を踏襲し、未発表データの論文化を加速させていきたい。また、本年度においてNature Ecology & Evolution誌でPerspective論文を発表したが、概念面で研究分野をリードするこうした成果を日本から発信する活動を続けていきたい。時間が許せば、総説的な成果を国際的に影響力のある雑誌に発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
これまで順調に研究が進み、翌年度に論文執筆を加速する予定でいる。オープンアクセス誌に出版できれば、より幅広い読者層に成果を公表することができるが、そのために出版経費を捻出しなければならない。たとえば、Nature Communications誌では1報につき70万円弱が必要となる。こうした雑誌に複数の論文掲載を翌年度目指すため、繰越を決めた。来年度はもともと計上していた予算が非常に少ないため、この措置は必須であると考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Nature Communications誌を始めとするインパクトの高い雑誌への掲載を目指し、その出版経費として利用する。また、これまで得られたデータを解析して、興味深い方向性が見出されれば、追加での実験を行うための経費とする。
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Research Products
(16 results)