2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26712015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯部 一夫 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30621833)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 森林土壌 / 窒素循環 / 硝化 / 脱窒 |
Outline of Annual Research Achievements |
始めに東京大学千葉演習林(スギ-ヒノキ人工林)と京都大学芦生演習林(ブナ優占-天然林)の斜面上部から下部までの土壌を採取し、窒素安定同位体希釈法を用いてを総アンモニア生成/硝化速度、分子生態学的方法により原核生物の16S rRNA量とアンモニア酸化微生物のアンモニアモノオキシゲナーゼ量を測定した。他の環境データや植物への窒素供給能としてのアンモニア生成/硝化速度と併せて、多変量パス解析を行い、微生物情報を入れることで森林土壌の窒素循環をよりよく説明できることを示し、「土壌の理化学性-窒素循環微生物-窒素循環速度-植物への窒素供給」の統合モデルを提示した。これらの結果について2件の雑誌論文と4件の学会にて発表した。 続いて上記のローカルスケールでみられた現象が広域スケールでも見られるのかどうかを検証するために、北海道から鹿児島、沖縄までの全国35サイト以上の森林(天然林と人工林を含む)の土壌を用いて、総アンモニア生成/硝化速度ならびに原核生物の16S rRNA量とアンモニア酸化微生物のアンモニアモノオキシゲナーゼ量の測定を行った。加えて、真核微生物の18S rRNA遺伝子量の測定を行った。今後、上記と同様の解析を行うためのデータを収集することができた。 またアンモニア生成と硝化に加え、脱窒も上記のモデルに組み込むことを目指し、土壌中の脱窒関連遺伝子を広く検出するための手法の開発ならびに測定条件の最適化を行った。その結果、亜硝酸還元遺伝子は従来の手法で示されていたよりもはるかの多様であり、かつ豊富(2-6倍)に存在していることを明らかにした。これらの結果については2件の投稿論文にて発表し、東京大学農学生命科学研究科よりプレスリリースを行った。 以上によりアンモニア生成、硝化、脱窒について、窒素循環速度と微生物群集を併せて解析するための基盤が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、全てのサイトにおいて窒素循環速度定量と窒素循環に関与する微生物の遺伝子定量を行うことができた。その中で脱窒微生物が有する遺伝子の定量法の確立に成功した。さらに本研究の主目的である「土壌の理化学性-窒素循環微生物-窒素循環速度-植物への窒素供給」の統合モデルを2つの森林(天然林と人工林)にて提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した手法を用いて全国の森林土壌中の亜硝酸還元酵素遺伝子の定量を行う。加えて、全細菌、カビ、硝化微生物群集の塩基配列解読を行う。以上のデータから全国の森林土壌で微生物群の分布を明らかにし、窒素循環速度との関係性から、微生物の窒素循環への寄与を定量的に明らかにする。また、これまでに一つのサイトで示した「土壌の理化学性-窒素循環微生物-窒素循環速度-植物の窒素吸収」の統合モデルが全国スケールにおいても当てはまるのかどうかについて検証する。
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Causes of Carryover |
博士研究員として雇用し情報解析を担う予定であった研究者が京都大学に助教として採用され、雇用をすることなく共同研究の形態で情報解析を担うこととなった。そのため人件費として計上していた分を次年度の予算として使用することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画よりも塩基配列解読のための予算が必要となったため、それに用いることを計画している。なお、その理由は、解析するべき遺伝子の数を増やしたことと塩基配列解読に必要なキットの値上げによる。
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