2014 Fiscal Year Annual Research Report
我が国水産業を成長産業化するための国際戦略策定と具体的方法設計の計量経済学研究
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26712018
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
有路 昌彦 近畿大学, 農学部, 准教授 (40512265)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水産経済学 / 計量経済学 / 資源経済学 / 水産貿易政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我が国の養殖業を中心とした水産業が、国際市場を得るための「攻めの戦略」を、課題とその解決策の特定、必要な費用の特定、および経済効果とB/Cの算定を通じ、定量的手法を駆使して策定することが目的である。上記の方針のもと、平成26年度に達成した成果は、次のとおりである。 1)【現状のままでの我が国水産業の将来予測】我が国水産物市場の構造方程式モデルを構築し、国内市場が縮小した場合のシミュレーションを行った。その結果、輸出向けの準備が十分に整わない場合に市場の縮小が進むと、我が国への水産物供給も縮小する結果となることが支持された。市場が縮小することは市場均衡価格の低下を招き、結果として国内水産業を現状よりもさらに圧迫する結果を招くことも予測された。 2)【国際市場展開策を取った場合の最大効果の推定】水産物市場の構造方程式モデルを用いて、国際市場展開策の最大効果を推定した。参入障壁の撤廃や輸出先進国並みのマーケティングが実現した場合、最大効果は過剰供給分が在庫として国内に蓄積されず、海外へ輸出される状態に該当する。その場合、市場均衡点から導かれる取扱金額の大きさが、現状のまま国内市場が縮小した場合よりも大きくなる。そのため、日本の水産業は積極的な輸出展開策を取ることにより、より大きな経済的メリットを得られることが示された。 3)【国際市場展開を行う上での手段特定】主に北米やEUにおける水産物市場の実態情報をもとに、国際市場展開を行う上で課題となる部分を抽出した。特に北米市場においては、マダイはフィレ・ラウンドともにフレッシュに関して潜在的な需要が存在することが判明した。また、フローズンに関しても十分可能性があることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的な分析内容である、水産物市場の構造方程式モデルの構築とシミュレーションを予定通り実行することができた。また、国際市場展開に必要な現地情報についても十分に入手できており、研究計画全体として、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、平成26年で分析した構造方程式モデルや国際市場展開に必要な要件についてさらに検討を重ね、国際的な議論に足る論文の水準に到達するまで分析を行う。構造方程式モデルからは定量的な指標を持って将来的予測や最大経済効果を明らかにする。国際市場展開の要件においても、引き続き海外の実態調査を中心に、必要な法整備や政策を特定する。課題としては十分な統計データを確保する点が重要であるが、昨年度の調査段階で入手先を特定できているので、研究の遂行上問題はない。
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Causes of Carryover |
当初計画ではヒアリング調査で必要な旅費に充てる予定であったが、計画より少ない行程で必要な情報収集を達成したので、支出計画よりも下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
情報収集をより拡充するべく、今年度調査計画におけるヒアリング調査の旅費に充てるものとする。
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