2015 Fiscal Year Annual Research Report
第一減数分裂中期停止の発生機序の解明と染色体異常のない卵子の獲得
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26712022
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
星野 由美 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (10451551)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 卵子 / 第一減数分裂中期 / 第二減数分裂中期 / 染色体 / 紡錘体 / 卵巣 / 受精胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に得られた成果に基づき、卵子の減数分裂に重要な役割を果たしているタンパク質の探索を進め、その中で鍵因子となり得るプロリン異性化酵素Pin1に着目してその機能解析を進めた。Pin1は、広範なタンパク質をターゲットとして、そのタンパク質の安定性や構造変化を調整することによって、細胞分化・増殖に必要な微小管の重合や細胞周期の進行、チェックポイントの制御に関与していると考えられている。卵子の成熟過程(第一減数分裂前期から第二減数分裂中期)において、Pin1の特異的阻害剤(Juglone)を処理すると、濃度依存的に第一極体の放出が抑制され、卵子の成熟を有意に阻害した。同条件で、減数分裂の進行に不可欠である細胞内小器官の局在を調べてみると、F-actinとα-Tubulinで特徴的な変化が認められた。すなわち、Pin1の阻害剤で処理をすると、極体放出前に出現するアクチンキャップは細胞質表層で形成されているものの、紡錘体の形成が不完全あるいは、紡錘体の向きが90度回転した結果、第一極体を放出できなかったことが明らかになった。減数分裂の進行には、アクチンやミオシンなどのタンパク質の機能が不可欠であるが、Pin1の発現阻害はそれらの機能を大きく阻害した。さらに減数分裂におけるPin1の機能を予測するため、卵巣の組織切片を作製し、その発現および局在を解析した。出生直後のマウス卵巣には多数の原始卵胞が存在するが、ほぼ全ての原始卵胞でPin1の発現が認められた。一方、卵子の形成・成熟が進む3~8週齢のマウス卵巣では、一部の原始卵胞でのみ発現していた。また、成熟過程の卵子では細胞質で発現が確認できるのに対し、退行している卵胞内卵子では、その発現レベルは極めて低かった。以上の結果から、Pin1は第一減数分裂の進行(第一極体の放出)に関与しているほか、発育可能な卵胞に発現し、卵子や卵胞の運命決定に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの2年間の研究により、卵子の成熟過程、特に第一減数分裂中期から第二減数分裂中期進行に関わる新規のタンパク質の同定に成功した。本研究課題の最大のポイントは、第一減数分裂中期における特異的な現象とメカニズムを明らかにすることであり、この目的に沿った研究遂行が出来ている。平成27年11月に東北大学から現所属の広島大学に異動になったこともあり、タイムラプス装置を利用したイメージングの解析に多少遅れがあるものの、専門家との密なディスカッションにより比較的順調に研究を遂行できている。現在の研究環境は、本研究課題を問題なく遂行できるものであることから、引き続き第一減数分裂中期における現象とそのメカニズムの解明に取り組んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定した第一減数分裂中期に機能するタンパク質の相互作用を明らかにするために、タイムラプスを利用しながら、細胞内の挙動と極体放出における機能を詳細に解析する。その際、当初の予定通り、微小管形成中心(microtubule organizing center: MTOC)の挙動を指標とする。また、紡錘体の形成や極体放出には、中心小体周辺物質の役割が大きいことから、この中心小体周辺物質の機能との関連性も明らかにする。これによって、第一減数分裂中期の現象を分子メカニズムで解明することができる。さらに、老齢モデルを利用して、第一減数分裂中における停止が、同定したタンパク質の機能不全によるものなのかを検証し、卵子の成熟過程における染色体異常の発生メカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
所属先の変更に伴い、平成27年10月~11月の間実験を停止させることになった。この間、当初予定していたタイムラプスイメージングを利用した実験を停止させたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度中に予定している実験は計画通りに遂行できる見込みであり、繰り越し額は、消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)