2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26713008
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
樽野 陽幸 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20706824)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 味覚 / 塩味 / GCaMP |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、蛍光イオンインジケータによる味蕾組織中の味細胞応答記録法の構築を目指して研究を推進した。まず、味蕾細胞に蛍光Ca2+センサー蛋白質G-CaMP3を発現するマウスの作製を行った。KRT19プロモータあるいはSCNN1Aプロモータ制御下にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウス(KRT19-CreマウスおよびSCNN1A-Creマウス)と、Creリコンビナーゼ活性によりコンディショナルにG-CaMP3を発現するAi38マウスを交配し、全味細胞もしくはENaC発現味蕾細胞選択的にG-CaMP3を発現するマウスを作製した(KRT-19:G-CaMP3マウスおよびSCNN1A:G-CaMP3マウス)。これらトランスジェニックマウスの味蕾におけるG-CaMP3の発現を免疫組織染色によって解析したところ、SCNN1A:G-CaMP3マウスにおいては先行報告と同様の味蕾細胞種に選択的にG-CaMP3の発現が確認された。一方で、全味蕾細胞にG-CaMP3を発現すると予想されたKRT-19:G-CaMP3マウスにおいては一部の味蕾細胞にしかG-CaMP3の発現が確認されず、当初の予想と異なる結果が得られた。KRT-19:G-CaMP3マウスの結果については、トランスジェニックマウス作製時のプロモータ活性が不十分であることなどが考えられる。 また、味細胞応答記録のための記録システムの構築も行った。スピニングディスク型共焦点レーザースキャナとEM-CCDカメラを倒立型顕微鏡に設置し、味蕾組織中のG-CaMP3の蛍光をライブイメージングする実験系も立ち上げた。 上記2点の研究実績により、世界に先駆けてG-CaMPを用いた新規味細胞応答記録法の構築が達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は「蛍光イオンインジケータによる味蕾組織中の味細胞応答記録法の構築」で、2つの主な達成目標があった。一つは「味細胞に蛍光Ca2+センサー蛋白質G-CaMP3を発現するマウスの作製」で、この項目についてはKRT19プロモータあるいはSCNN1Aプロモータ制御下にG-CaMP3を発現するトランスジェニックマウス(KRT-19:G-CaMP3マウスおよびSCNN1A:G-CaMP3マウス)を作製した。結果は、SCNN1A:G-CaMP3マウスが上皮型ナトリウムチャネル発現味細胞選択的にG-CaMP3を発現することがわかり、平成27年度以降の実験に有用であることが示された。一方で、全味細胞にG-CaMP3を発現すると期待されたKRT-19:G-CaMP3マウスでは一部の味細胞にしかG-CaMP3を発現せず、CreマウスあるいはGCaMPレポーターマウスの種類を変えるなどして改善されるかを試みる必要がある。もう一つの達成目標は、「共焦点レーザー顕微鏡観察下における味刺激応答記録法の確立」であるが、この項目についてはスピニングディスク型共焦点レーザースキャナとEM-CCDカメラを倒立型顕微鏡に設置し、味蕾組織中のG-CaMP3の蛍光をライブイメージングする実験系の立ち上げに成功している。味蕾の刺激装置や記録チャンバーの形状については翌年度以降の実験の中で改善が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は、これまでに「蛍光イオンインジケータによる味蕾組織中の味細胞応答記録法の構築」について一定の成果があったので、この記録システムについて常時改善を加えながら、次の達成目標である「塩味の受容・処理・統合機構の体系的解析」を開始する。まずは、これまでに開発した味蕾組織中の味細胞応答記録法を利用して、ENaC発現細胞の味刺激応答特性を解析する。具体的には、味孔からのNaCl刺激にCa2+応答する細胞を同定した後に組織を固定し、免疫染色によって塩味応答細胞におけるENaC発現を解析する。次に、塩味による細胞興奮の分子基盤を解析する。具体的には、各種Ca2+チャネル阻害剤の効果を解析してCa2+流入経路の分子基盤を薬理学的に同定する。また、電位依存性Na+チャネルの関与はtetrodotoxinを用いて解析する。本実験で薬理学的に関与が示唆された分子の発現を、Ca2+応答記録後に免疫染色によって確定する。さらに、ENaCによるNa+輸送-味細胞興奮連関・塩味情報の統合機構についても、それまでの研究で得られた知見に基づいて順次行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、「蛍光イオンインジケータによる味蕾組織中の味細胞応答記録法の構築」のために予算計上を行っていたが、この予算は測定機器の購入だけでなく、トランスジェニックマウスの作製や記録チャンバーの設計・開発が目的とされていた。平成26年度には共焦点レーザー顕微鏡の購入は行ったが、トランスジェニックマウス作製や記録チャンバーの設計・開発については実際の実験を行いながら継続して行っていく必要があるために、次年度以降に基金分の使用を繰り越すことに決定した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度以降、繰越し金は追加のトランスジェニックマウス作製に必要な経費(マウス作出費用・マウス輸送費用・マウス検疫費用を含む)、あるいは記録チャンバー・灌流システムを含めた生理学実験設備の設計・開発費として使用していく予定にしている。
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[Presentation] CALHMイオンチャネルの構造・機能の解析.2014
Author(s)
Taruno, A., Ma, Z., Niisato, N., Miyazaki, H., Kashio, M., Sun, H., Foskett, J.K., & Marunaka, Y.
Organizer
膜シンポジウム2014
Place of Presentation
神戸
Year and Date
2014-11-26 – 2014-11-27
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