2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26713035
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石津 綾子 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別研究員RPD (10548548)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 巨核球 / 造血幹細胞 / 分化 / ニッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
恒常的な血球産生には骨髄において造血幹細胞の維持・増殖・分化は不可欠である。当研究は成熟血球である巨核球に焦点を当て、巨核球のニッチとしての作用及び造血幹細胞からの巨核球の分化の解明を目的としている。申請者は一昨年、巨核球が造血幹細胞を制御していることを報告した(Nakamura-Ishizu et. al., BBRC, 2014)。この報告をもとに、さらには本年度、巨核球による造血幹細胞制御が巨核球上の膜タンパクであるCLEC2により制御されていることを報告した(Nakamura-Ishizu et. al., JEM, 2015)。具体的には巨核球特異的CLEC2マウスを解析したところ、CLEC2欠損に伴い、巨核球が産生する様々ニッチ因子の遺伝子発現の低下を認めた。その一つのニッチ因子として、Thrombopoietinの産生低下も認めた。CLEC2欠損マウスにおいては骨髄造血幹細胞の正式の維持が低下し、競合的骨髄移植においても造血幹細胞能の低下を認めた。また、遺伝子発現の網羅的な解析においても、CLEC2欠損マウスからの造血幹細胞において、幹細胞能機能を示す遺伝子群の発現低下を認めた。これらのことより、CLEC2による巨核球のニッチ機能のBroadな低下により、造血幹細胞の幹細胞機能の低下をきたしていることを提唱した。骨髄ニッチにおける、巨核球及び巨核球が発現する特異的な分子CLEC2の作用を解析したことは、造血幹細胞の維持機構を解明することに重要であり、臨床医学において、造血疾患の病態解明や造血幹細胞移植など造血幹細胞を治療への応用に有用な発見と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、巨核球CLEC2が造血幹細胞の重要なニッチであることを論文にて報告した。この論文にて巨核球と造血幹細胞の相互関係に関して、基盤となる報告をすることができた。しかし、巨核球がどのように造血幹細胞を制御しているのかその詳細なメカニズムは未解明である。また、巨核球及び造血幹細胞は非常に共通する表面マーカーや遺伝子発現を示しており、造血幹細胞からの巨核球分化がどのようなメカニズムにより行われているか、詳細は不明である。現在、巨核球による造血幹細胞制御機構及び造血幹細胞からの巨核球分化の詳細を解析すべく、様々なマウスモデルの発現解析、造血解析をFlow cytometry、免疫組織染色にてすすめている。さらにはまた、巨核球におけるThrombopoietinの産生の分子メカニズムを解明すべく、巨核球の遺伝子発現の網羅的な解析なども進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
巨核球がどのような分子メカニズムでThrombopoietinを産生し、また造血幹細胞を維持するのか、明確ではない。同時に巨核球系の前駆細胞は造血幹細胞と非常に類似した遺伝子・分子学的な特徴を有しており、その分化のメカニズムは明瞭ではない。現在行っているCLEC2欠損マウスの解析に加え、CLEC2のreceptorであるポドプラニンのレポーターマウスの作成・飼育を進めている。また、ポドプラニンの骨髄内での発現をフローサイトメトリー、qPCR、免疫組織染色にて確認していく。また、ポドプラニン欠損マウスも同時に飼育しており、その解析もすすめている。また、造血幹細胞からの巨核球分化の詳細なメカニズムを解析するため、シングルセルレベルでの造血幹細胞の分化状態を遺伝子発現解析、単一細胞の培養、競合的造血幹細胞移植により検証している。これらの解析にて骨髄における巨核球と造血幹細胞の関係性についてより深い理解を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
申請者は2014年度に慶應義塾大学から熊本大学に研究先を移動している。この移動に伴い、一時期実験が遅延したため、本年度は未使用金額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、移動後の研究体制は整っており、研究は順調に進みだしたため、本年度に使用されなかった研究費を使用できる見込みである。
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