2014 Fiscal Year Annual Research Report
小児難治性白血病を対象としたDNA・RNAの包括的構造解析
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26713037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 元博 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40708690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小児白血病 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
【平成26年度の研究内容】本研究は難治性の小児急性リンパ性白血病を対象とし、次世代シークエンサーを中心としたゲノム解析技術を用い、DNA・RNAの包括的な解析を行う計画である。 平成26年度は新規診断(初発)の急性リンパ性白血病として、再発高リスクであることがしられているT細胞性の表現型をもつものを中心に解析を施行し、26例を対象として解析を行った。あわせて、再発急性リンパ性白血病を8検体解析を行った。 計34例の解析の結果、すでに白血病の病態との関与が報告されているMLL-ENL融合遺伝子が検出され、解析系が正確に作動していることがまず確認された。さらに、病態への関与がすでに報告されていたTAL1をpartnerとした新たな融合遺伝子が確認されたほか、血球の分化・成熟に関与する転写因子を含んだ融合遺伝子が検出された。中には2例で共通して検出された融合遺伝子が存在し、T細胞性急性リンパ性白血病において、頻度は高くないものの(34例中2例=5.9%)、従来は特定されていなかった分子病態の解明につながる結果と考えられた。 また、再発白血病のみに注目すると、全エクソン解析では、再発時で遺伝子変異数が増加している一方で、初発時のみに検出される変異もあり、急性リンパ性白血病において、再発は多様なクローン構造の変化がdynamicに生じていることが推測された。 【平成26年度の研究成果の意義】今回見出した融合遺伝子は、これまで理解が進んでいなかった小児T細胞性急性リンパ性白血病の分子病態を明らかにする嚆矢となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は50例の白血病細胞を解析することで新たな標的遺伝子を特定する計画であった。件対数は34例と予定よりも少なくはあったが、病態に関与する可能性の高い融合遺伝子が特定できたため、研究全体の進捗としてはおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に特定された融合遺伝子や、遺伝子変異について、細胞株への導入により、分子生化学的な機能解析を行い、それらの異常がどのように白血病の病態に関与しているかを確認する。一方で、症例数をさらに増やすことで、小児白血病全体における頻度の確認を行う。 また、検出された他の異常をもちいて、白血病の治療過程(診断~寛解~再発)のkineticsを明らかにすることを目指す。
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