2015 Fiscal Year Annual Research Report
難診断疾患の診断薬を目指した[18F]CF3標識プローブの実用的な合成法の開発
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26713041
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
水田 賢志 長崎大学, 医歯薬学総合研究科 (医学系), 助教 (50717618)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トリフルオロメチル / イオン性液体 / フッ化物イオン / イミダゾリウム塩 / [18F] |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ガンやアルツハイマーの新しい診断薬を目指した[18F]-標識PETプローブの実用的な合成法の開発である。目的は、幅広い基質と反応するトリフルオロメチルラジカル種に着目し、[18F]トリフルオロメチルラジカルの発生法の確立と、多様なPET標識プローブの合成を可能とする18F-トリフルオロメチル化反応を開発である。様々な金属(Ag、Cu、Ni、Pd)を用いて、ラジカル種とのクロスカップリングを試みたが、望ましい成果は得られなかったことから、求核性が低いフッ素アニオン種に反応するような、反応中間体を発生させることに念頭を置き、カルボカチオン種の発生に着目した。ブロモジフルオロメチルスルフィド化合物に、銀トリフラート(I)を処理し、首尾よくジフルオロメチル炭素上にカルボカチオンを形成し、フッ化物イオンとの反応によりSCF2-F結合形成することを見出した。一方、医薬品に多く見受けられる4置換炭素のフッ素導入法にも着手した。3-ブロモオキシインドールを3HF・ET3Nと無機塩の存在下、様々な条件を検討した結果、イオン性液体が最適な溶媒であることを見出し、求核的フッ素化反応のよるフッ素置換4置換炭素を構築することに成功した。計算科学を用いてイオン性液体の役割を解析したところ、イオン性液体であるイミダゾリウム塩の酸性プロトンがHFのフッ化物イオンと相互作用し、またそのカウンターイオンがHFの水素と相互作用することで、H-F結合距離を0.04A伸長することが分かった。現在、これらのPET標識化に向けて研究を継続中である。 一方、医薬品探索の一環として、トリフルオロメチル含有ヘテロ環合成を(Z)選択的なカルベニウム中間体の形成およびケトンとの反応でスピロ環を含むa,b-不飽和エステル並びにヒドラジン誘導体との反応によりトリフルオロメチルピラゾリノン化合物の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の鍵となるフッ素化反応であるSCF2-F結合形成反応並びに、フッ素置換4置換炭素の構築に成功した。フッ化物イオンを用いた4置換炭素の構築法は、本分野においてほとんど報告されておらず、新しい知見といえる。また、PETプローブの合成において、求核的フッ素化反応は、有用な反応であることから、本研究は概ね順調に進展しているといえる。また、本研究の過程で、トリフルオロメチルチオイミダゾリウム塩が相間移動触媒として働くことを見出しことや、医薬品探索の一環として、トリフルオロメチル含有ヘテロ環合成を(Z)選択的なカルベニウム中間体の形成およびケトンとの反応でスピロ環を含むa,b-不飽和エステル並びにヒドラジン誘導体との反応によりトリフルオロメチルピラゾリノン化合物の合成に成功したことからも、本研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
効率的に求核的フッ素化反応を触媒化する報告例は、これまでにほとんど前例がない。今後の研究の方策として、フッ素化を触媒化するラリアット型触媒に着手している。本触媒や、これまでに見出したフッ素化反応を基に、PETプローブの合成への応用に向けて推進していく。 また、医薬品探索として、フッ素含有ヘテロ環骨格の構築法にも着手し、将来的にPETプローブの候補となる化合物の探索に注力する。
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Causes of Carryover |
研究に使用するPET試薬の輸送には、サイクロトロンを有する共同研究先の病院に放射線取扱1種を有する主任者を配置し、次いで使用変更届けを原子力規制委員会に提出する必要がある。現在、書類の作成準備をしているため、実施試験が遅延しているため、研究の延長申請を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本課題に関して、S-CF3結合形成反応、並びに求核的フッ素化反応を見出しており、これらの成果を論文投稿するために、実験成果の取りまとめに使用する試薬類や論文の投稿料に使用する。また、反応機構を計算科学による検証実験を進めるための費用にも使用する。
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