2015 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌の新規バイオマーカー開発を目指したがん代謝のエピゲノム解析
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26713042
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
馬場 祥史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (20599708)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Cancer metabolism / epigenetics / esophageal cancer / LSD1 / LINE-1 / 細胞外フラックスアナライザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、食道癌のがん代謝に関与するepigenomic biomarker について探索することである。がんに特徴的な代謝メカニズムを明らかにすることは、新たながん治療のターゲットの発見に繋がる可能性がある。まず、LSD1(Lysine-specific demethylase-1)という分子に注目し、検証をはじめた。LSD1は、脂肪細胞において細胞内FAD依存的にH3K4の脱メチル化を起こし、エネルギー消費遺伝子(PGC-1αなど)の発現を制御、ミトコンドリア代謝を抑制することが報告されている。LSD1は、食道癌の癌部において発現が亢進しており、発現レベルが高い症例は低い症例に比べて有意に予後不良であることが分かった。さらに、その発現レベルは、PETのSUV値と有意に相関しており、がん代謝との関連が示唆された。次に、食道癌細胞株を用いて検討を行い、SiRNAでLSD1の発現レベルを抑制すると、癌浸潤能が抑えられ、癌浸潤との関係が示唆された。また、細胞外フラックスアナライザーを用いて、細胞内のがん代謝プロファイルを検証したところ、LSD1は解糖系の指標であるECAR、ミトコンドリア呼吸の指標であるOCRの変化に寄与することが分かった。これらの結果をInternational Journal of Cancer誌に投稿し、採択された(Int J Cancer. 2016 15;138:428-39)。また、消化器癌におけるepigenetic 変化の発癌における重要性についての総説を執筆し、Cancer letters誌に採択された。がん代謝に関わるepigenomic biomarkerを網羅的に解析するために、FDG-PET値の高い症例(≒がん代謝依存大)と低い症例(≒がん代謝依存低)を それぞれExpression arrayに提出し、多くの代謝関連遺伝子がpick upされており、その中から特にエピゲノム関連マーカーを選択する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
“LSD1”というエピジェネティック関連遺伝子に着目し検討したところ、臨床検体、in vitro assay両者においてがん代謝との関連を支持する結果が得られた。これにより、食道癌のがん代謝とエピゲノムに関して網羅的に解析することの重要性が再確認されたと考えている。これらのデータは、International Journal of Cancer誌に投稿し、採択された(Int J Cancer. 2016 15;138:428-39)。実際に、FDG-PET値の高い症例(≒がん代謝依存大)と低い症例(≒がん代謝依存低)をそれぞれExpression arrayに提出したところ、がん代謝に関わるepigenomic biomarkerが多くの同定されている。今後は、これらのbiomarkerを300例以上の食道癌バイオバンクを用いて検証していく。 また、現在は、酸化ストレス応答転写因子であるNRF2が食道癌において高発現し、がん代謝のkey factorであるということが明らかになりつつある。今後は細胞外フラックスアナライザー、質量分析器などを用いてNRF2のがん代謝制御機構の解明をすすめる。
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Strategy for Future Research Activity |
Expression arrayにより、がん代謝に関わるepigenomic biomarkerが多くの同定されている。今後は、これらのbiomarkerを300例以上の食道癌バイオバンクを用いて検証していく。我々の施設は、年間60 例以上の食道癌手術を行なっており、臨床検体は豊富である。そして、それらの切除組織、臨床データは系統的に管理されている。現時点で300例以上の食道癌症例におけるKRAS,BRAF,PIK3CA遺伝子変異、LINE-1メチル化レベルなど様々なバイオマーカーの情報が集積されている。食道癌のPET検査の結果が得られる症例は200 例以上あるため、臨床的にがん代謝との関連を検証することも可能である。消化器癌におけるエピジェネティック変化研究の世界的リーダーであるDana-Farber Cancer InsituteのDr. Shuji Ogino とも適宜連絡をとり、必要に応じてsuggestion を受けていく予定である。 その中の一つとして、特に注目しているのが、NRF2という酸化ストレス応答転写因子である。NRF2は食道癌において高発現し、それらの症例は予後不良であることが分かっている。また、NRF2はがん代謝のkey factorであるということが明らかになりつつあり、今後は細胞外フラックスアナライザー、質量分析器などを用いてNRF2のがん代謝制御機構の解明をすすめる。さらには、NRF2の発現レベルは、エピジェネティックに制御されることが分かっており、今後はepigenomic biomarkerとしての有用性も検証していく。
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Causes of Carryover |
当初予定より安価にて購入ができ、また、いくつか医局保管の試薬を使用することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
がん代謝に関わるepigenomic biomarkerが多くの同定されている。今後は、これらのbiomarkerを300例以上の食道癌バイオバンクを用いて検証していく。その際の解析委託費、及び検証実験に係る各種消耗品購入費、実験補佐員雇用のための費用に充てる。また、研究成果発表のための旅費に使用する。
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[Journal Article] Lysine-specific demethylase-1 contributes to malignant behavior by regulation of invasive activity and metabolic shift in esophageal cancer.2016
Author(s)
Kosumi K, Baba Y, Sakamoto A, Ishimoto T, Harada K, Nakamura K, Kurashige J, Hiyoshi Y, Iwatsuki M, Iwagami S, Sakamoto Y, Miyamoto Y, Yoshida N, Oki E, Watanabe M, Hino S, Nakao M, Baba H.
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Journal Title
Int J Cancer.
Volume: 138(2)
Pages: 428-39
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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