2015 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼運動が脳機能と全身身体機能に与える影響の解明:非侵襲的脳機能測定法を用いて
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26713055
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮本 順 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助教 (10451949)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 口腔 / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、咀嚼運動に必要不可欠な末梢器官である 「歯」の機能障害(歯の喪失や不正咬合等)が、高次中枢を介して、どのように全身身体機能に影響を与えるかについて全容を解明することである。 ●咬みしめによる上肢筋促通とその高次中枢の役割の解明:四肢の骨格筋筋力発揮時に、咬みしめによって四肢運動機能の促通が生じ、この作用に上位中枢が関与していることが示唆されているが詳細は不明であった。そこで共著者がfMRIを用い、咬みしめに伴う握力の促通作用とそれに関与する脳領域を同定した。これを発展させた研究として、咬合状態の違いが脳活動に影響を与えるかを検討するため、予備実験として正常咬合を有する被験者を詳細に分類することを計画し、握力発揮時に習慣性咬みしめを行う/行わない群に分け、咬みしめの有無による握力の変化を測定した。 ●前歯/臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定:前歯部および臼歯部咬合時のfMRI-筋電図同時計測を行い、脳賦活領域を同定、またそれらの違いを検討することを行ってきた。fMRIと同時計測を行った筋電図は、左右側頭筋および咬筋を測定した。前年度に引き続き、被験者数を増加し解析を行っているが、今年度は特に、今後筋電図データをfMRIデータのパラメータとして用いるために、筋電図データの詳細な解析を遂行した。 ●咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明:空腹時および満腹時に、食物関連の視覚刺激に対する反応時間を、咀嚼有/無の条件にて計測し、食物への注意力が咀嚼の有無により変化するかに関して検討した。成果として、咀嚼の有無により食物関連の視覚刺激に対する反応時間が有意に異なった。さらに、今年度は同条件下にて眼球運動測定も測定したところ、咀嚼の有無により食物への初期注意力の変化が認められた。これらの成果を国内学会に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
●咬みしめによる上肢筋促通とその高次中枢の役割の解明:咬みしめに伴う握力の促通作用の検討において、正常咬合を有する群を握力発揮時に習慣性咬みしめを行う/行わない2群に分けて検討を行う必要性があると考えられ、握力測定の予備実験を行ったところ、咬みしめの有無による握力変化が異なる傾向が得られた。脳機能測定の前段階として、握力測定実験がさらに必要であると考えられる。 ●前歯/臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定:前歯部および臼歯部咬合時のfMRI-筋電図同時計測実験は、順調に進んだと考えられる。さらに今年度は、筋電図データの詳細な解析を遂行し、fMRI同時計測により生じるアーティファクトの除去に関して、より洗練した方法を模索した。また、各被験者の課題遂行の正確性の検討も行った。 ●咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明:空腹時および満腹時に、食物関連の視覚刺激に対する反応時間を、咀嚼有/無の条件にて計測し解析を行った。さらに、研究計画において付加的に測定する予定だった、同条件下の眼球運動測定も行うことができた。これらの成果を、国内学会に発表したので、実験が順調に進展したと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
●咬みしめによる上肢筋促通とその高次中枢の役割の解明:咬合状態の違い(正常咬合・不正咬合)を比較する前に、正常咬合を有する群を握力発揮時に習慣性咬みしめを行う/行わない2群に分ける必要があると考えられ、本年度も握力測定実験の予備実験を行ったが、一方の群は該当する被験者が非常に少ないため、被験者の確保が重要な問題となってくる。さらに被験者をリクルートし、握力測定実験を行っていく予定である。また、不正咬合を有する群に関しては、正常咬合群に一時的に可逆的な不正咬合を発生させ、握力測定の予備実験を行うことを計画している。 ●前歯/臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定:前歯部および臼歯部咬合時のfMRI-筋電図同時計測実験は、今後も被験者を増やし、解析をすすめていく予定である。筋電図データの詳細な解析を遂行し、脳機能データの解析パラメータに使用する予定である。 ●咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明:咀嚼が食物への注意力に変化をもたらすかを検討し、国内学会に発表した。今後は、国際学会への発表および論文作成・投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品費に関して、昨年度東京医科歯科大学・歯学部附属病院での3TMR装置を用いたfMRI測定のセットアップを行ったが、同施設での本格的なfMRI実験は行っていない。その理由として、今年度は、1)東京医科歯科大学・歯学部附属病院にて行っている実験は、fMRIを用いる前段階の予備実験、および反応時間測定・眼球運動測定の行動学的実験のみであること、2)fMRI-筋電図同時計測の機器が完備されている国立精神・神経医療研究センターにて、正常咬合者を対象にfMRI実験を行っていることが挙げられる。それにより、東京医科歯科大学・歯学部附属病院で使用するためのMR compatible筋電図測定装置・握力測定装置および解析装置を購入していない。また前述のように、研究の一部が予備実験の段階であるため、リクルートした被験者数が想定より少なく、謝金等が予定額を下回った。さらに研究打ち合わせの日程調整の関係上、旅費が予定額より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予備実験が終了し次第、東京医科歯科大学・歯学部附属病院での3TMR装置を用いたfMRI測定を行っていく予定なので、前年度繰り越した分の測定装置の購入、被験者への謝金が予定される。また、「咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明」においては、研究成果の一部に関して論文投稿を行う予定であるため、それに関連する英文校正代、学術誌投稿代、印刷代等を使用する。さらに、海外における研究調査を行う予定なので、前年度繰り越した分の旅費を使用する予定である。
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Research Products
(8 results)