2016 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼運動が脳機能と全身身体機能に与える影響の解明:非侵襲的脳機能測定法を用いて
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26713055
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮本 順 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助教 (10451949)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 口腔 / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、咀嚼運動に必要不可欠な末梢器官である 「歯」の機能障害(歯の喪失や不正咬合等)が、高次中枢を介して、どの ように全身身体機能に影響を与えるかについて全容を解明することである。 1、前歯/臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定 前歯部および臼歯部咬合時のfMRI-筋電図同時計測を行い、脳賦活領域および脳賦活パタンを同定し、またそれらの違いを検討することを行ってきた。前年度に引き続き、被験者数を増加し解析を行っているが、今年度は特に、筋電図データをパラメータとした脳賦活パタンの詳細な解析を遂行した。そして、前歯/臼歯部咬合の違いにより、咀嚼運動時の脳賦活パタンが異なることが示唆された。この結果より、前歯/臼歯部の役割の違いは、歯科医学分野においては解剖学的形態の違いに基づいて説明されているが、脳賦活パタンの違いに着目することにより、運動制御の観点からも説明することができると思われる。 2、咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明 ヒト高次中枢摂食機構に関する研究において、空腹時および満腹時の食物に対する注意の違いが報告されている。よって、咀嚼条件にて、食物関連の視覚刺激に対する反応時間および眼球運動を測定し、食物への注意力が咀嚼により変化するかに関して検討した。成果として、ガム咀嚼条件と摂食条件において、食物関連の視覚刺激に対する反応時間は、ガム咀嚼前後と摂食前後ともに有意に変化し、食物への注意力が減少した。さらに、眼球運動測定においても、ガム咀嚼前後と摂食前後で、食物への初期注意力の有意な変化が認められた。これらの成果を国際学会に発表した。この研究から、咀嚼が摂食調節機構に与える影響について解明され、肥満予防の客観的なエビデンスを提示できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、前歯/臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定 前歯部および臼歯部咬合時のfMRI-筋電図同時計測実験は、おおむね順調に進んだと考えられる。前年度に行った筋電図データの詳細な解析を基に、筋電図データをパラメータとして、fMRIデータの解析を行った。そして、前歯/臼歯部咬合における異なった脳賦活パタンが示唆された。 2、咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明 食物関連の視覚刺激に対する反応時間および眼球運動を、ガム咀嚼条件と摂食条件にて計測し、解析を遂行した。これらの成果を国際学会に発表、論文作成を開始したため、実験が順調に進展したと思われる。 3、しかしながら、不測の病気にて入院が必要となったため、研究の一部は翌年度に行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1、前歯/臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定:前歯部および臼歯部咬合時のfMRI-筋電図同時計測実験は、今後筋電図データにおける最適なパラメータをさらに模索し、fMRIデータの詳細な解析をすすめていく予定である。 2、咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明:論文を作成し投稿を行ったが、ガム咀嚼条件・摂食条件に加え、コントロール群としての安静条件が必要である旨の指摘を受けた。よって今後は、安静条件にて、反応時間および眼球運動測定を行い、今年度に遂行したガム咀嚼条件・摂食条件と比較検討を行っていきたい。その成果に関して、学会発表、論文作成を行う予定である。 3、東京医科歯科大学・歯学部附属病院でのfMRI実験立ち上げおよび予備実験遂行:被験者のリクルートが簡便になるよう、同施設におけるfMRI実験立ち上げおよび予備実験遂行を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 東京医科歯科大学・歯学部附属病院での3TMR装置を用いたfMRI測定は、現在本格的な実験が開始していない。その理由として、今年度は、1)不測の病気により実験の立ち上げが完了していないこと、2)同施設において行っている反応時間測定・眼球運動測定の行動学的実験に関して、追加実験が必要であること、3)fMRI-筋電図同時計測の機器が完備されている国立精神・神経医療研究センターにて、正常咬合者を対象にfMRI実験を行っていることが挙げられる。 それにより、東京医科歯科大学・歯学部附属病院で本格的な実験を遂行するための物品を購入していない。また前述のように、研究の一部が本格的な実験の前段階であるため、リクルートした被験者数が想定より少なく、謝金等が予定額を下回った。 さらに実験結果に関して研究打ち合わせを行うための旅費が、予定額より少なくなった。 (使用計画) 実験立ち上げ、および予備実験が終了し次第、東京医科歯科大学・歯学部附属病院での3TMR装置を用いたfMRI測定を行っていく予定なので、実験に必要な物品の購入、被験者への謝金が予定される。また、「咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明」においては、研究成果の一部に関して論文投稿を再度行う予定であるため、それに関連する英文校正代、学術誌投稿代、印刷代等を使用する。さらに、研究結果に基づき、海外における研究調査を行う予定なので、旅費を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)