2015 Fiscal Year Research-status Report
回路計算量の下界証明におけるアルゴリズム的手法の研究
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26730007
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
脊戸 和寿 成蹊大学, 理工学部, 講師 (20584056)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 充足可能性問題 / 厳密アルゴリズム / 論理回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は計算量クラスのTC0とNEXPの分離である.TC0とは多項式サイズの定数段数閾値回路で計算できる関数の集合である.閾値回路とは入力無制限のAND素子,OR素子と単入力のNOT素子に加えて,入力無制限の閾値素子で構成される回路である.与えられた閾値回路の出力が1になるような入力変数への割り当てが存在するかを問う問題を閾値回路の充足可能性問題という.任意の多項式サイズの定数段数閾値回路に対して,全探索よりも真に高速な充足可能性判定アルゴリズムを設計することができれば,TC0とNEXPを分離することができる.しかし,閾値回路の特殊ケースである最大充足可能性問題ですら,任意の多項式サイズの例題に対して全探索よりも真に高速なアルゴリズムは知られていない.
平成27年度は3段かつ素子数を線形に限定した閾値回路の充足可能性問題に対して,全探索よりも真に高速なアルゴリズムを設計することを目標に研究を行い,以下の3つの結果を得た. 1つ目は閾値回路の特殊ケースである最大充足可能性問題に対する厳密アルゴリズムの計算時間を前年度の結果より改良することに成功した.2つ目は任意の多項式サイズの最大充足可能性問題に対し,全探索よりも真に高速なアルゴリズムの設計に成功した.3つ目は,論理回路とは異なる計算モデルである分岐プログラムの特殊ケースであるk-IBDDに対する充足可能性問題に対して,全探索よりも真に高速なアルゴリズムの設計に成功した. 3段閾値回路の充足可能性問題に対するアルゴリズムを設計することはできなかったが,その過程で様々な技法を習得したことにより,これらの結果を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究申請書に記載した最終目標は計算量クラスのTC0とNEXPの分離であり,平成27年度は3段閾値回路の充足可能性問題に対する厳密アルゴリズムの開発であったが,その目標を達成することはできなかった. しかし,その目標を達成する過程の中で様々な技法を習得することができ,それらを利用することで様々な充足可能性問題に対し,全探索よりも高速な新たなアルゴリズムを設計し国際会議等で発表することができた. またこれまで知られていなかった,任意の多項式サイズの最大充足可能性問題に対して,全探索よりも真に高速なアルゴリズムを開発できたことは問題の解決に一歩近づいたといえる. これらを加味すると,研究はおおむね順調に進展していると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の目標は,本来であればTC0とNEXPの分離のために多項式サイズの閾値回路の充足可能性問題に対する厳密アルゴリズムの設計であるが,現在の研究遂行状況と同分野の世界的な研究者たちとの議論から,本年度は27年度に目標としていた3段TC0の充足可能性問題の厳密アルゴリズムの開発および,定数段数回路に含まれるの閾値素子の数を限定した回路の充足可能性問題に対する厳密アルゴリズムの開発を行う. これらの研究について,共同研究者らと積極的な議論を行うことで推進していくことを第一とし,国際会議等の参加により様々な研究者と議論をすることで推進していくことを考えている.
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Causes of Carryover |
論文出版における掲載費が1つの雑誌にしかかからなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在投稿中の論文誌には掲載費が必要となるため,そちらに充てる予定である.
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