2016 Fiscal Year Research-status Report
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26730019
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
吉田 拓真 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (80707141)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 加法型モデル / B-スプライン回帰 / 漸近理論 / 次元削減 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、研究目的に記載している(A2)高次元B-スプライン回帰における漸近理論と(B2)モデル平均法に基づくスプライン曲面回帰分析法の開発に従事した。 (A2) 本研究では高次元B-スプライン回帰の関連研究を3編の論文にまとめた。1本目、2本目はそれぞれ"Structure discovery and parametric guided regression"、"Semiparametric method for model structure discovery in additive regression models" というタイトルで、これらの論文では、B-スプラインモデルとパラメトリックモデルを融合させたセミパラメトリックモデルを扱っており、従来のB-スプライン法よりも柔軟なモデルとなっている。このような新たなモデルに対して、漸近理論を構築した。1本目は通常の回帰モデルについて、2本目は加法型回帰モデルによるものである。3本目は、"Two stage smoothing in additive models with missing covariates"というタイトルで、この論文では、欠測データに対する高次元回帰に対する漸近理論を構築している。また、2段階推定により、推定量が漸近正規性を持つことを述べている。 (B2) モデル平均法に基づくスプライン曲面回帰分析法について、成果を1編の論文にまとめた。"Nonlinear surface regression with dimension reduction method"というタイトルで、この論文では、モデル平均の重みの決定にSufficient dimension reductionという手法を用いており、これを用いることで従来の手法に対して分散減少の効果があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的におけるA2, B2については、研究成果を論文にまとめ国際ジャーナルへ掲載済み、または確定しており、順調である。また、これらはいわゆる平均回帰を想定した結果であるが、分位点回帰やロバスト回帰の枠組みへ応用させることも可能とみており、研究成果の進展も望まれる。 B1:B-スプライン回帰推定量の平滑化パラメータの自動決定については前年度までに成果を論文にまとめ、国際ジャーナルへ掲載済みである。応用問題として、分位点回帰、高次元回帰など様々考えることができる。後述するA1の研究のめどが立ち次第、この問題にも着手したい。この意味で、これらの研究については順調に進展しているといえる。 A1:加法型B-スプライン分位点回帰の漸近理論については、推定量が漸近正規性を有することが導出できた。また数値シミュレーションも順調し進捗している。現在は、高次元、極値挙動など、研究の応用問題への導入に着手しており、今後の展開への可能性をまとめている。得られた漸近理論などはすでに論文にまとめている段階であり、平成29年度に国際ジャーナルへ投稿する予定である。 それぞれ4つの研究は、それ自体は順調に進捗し、成果が得られている。それらを組み合わせ新たな統計手法を確立することは重要であり、現在までの研究でおおよその見通しを立てることができている。 これらの観点から、本研究の進捗状況としては決して悪くなく、すでに得た結果の応用も見据えることができるため、総合的におおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究課題A1とA2を融合させた高次元加法型B-スプライン分位点回帰の漸近理論の構築に着手する。まずは、高次元に対応するためにはスパース法を分位点回帰に導入することが不可欠であるため、どのようなスパース法が分位点回帰に適しているのかを数値シミュレーションにより検証する。また、スパース法による推定量は、最適化法による数値近似によって得られる。様々な近似法がある中でも精度のよい方法を探ることも重要な課題であり、これらも同時にシミュレーション検証を行う。同時に理論的性質に関する文献の調査・分析を行い、スプライン法への適用を試みる。研究の第一の目標はスプライン推定量の漸近収束レートを解明することである。 スパース法による推定量について、漸近収束レートは様々なモデルで導出されているが、漸近分布を導出している結果は少ない。分位点回帰でこれを実現するために、2段階推定法を用いることを考えている。その際に、スパース法で0に打ち切られる項の取り扱いに十分注意する必要があり、扱いを誤ってしまうと理論的にバイアスが生じることが予想される。このバイアスが生じないような方法、あるいはバイアスを除去する修正法の構築も重要な課題である。そこで、まずは本研究について (1) バイアスが生じない場合の漸近分布の導出 (2)バイアスが生じる場合の漸近理論の構築 を目的とする。これらの問題は (3) バイアス項が生じる場合、これを除去するような推定量と漸近理論の構築 に比べるとアプローチしやすい。このような段階的な研究の推進による対応を考えている。
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Causes of Carryover |
本年度の経費は、研究推進に不可欠な他研究者との議論、会議での成果報告のための旅費に割いた。特に本研究に関連する研究者との長期議論のための旅費と国際会議への講演参加を予定していたため、海外への旅費に多くの予算を見積もっていた。しかし、どちらも長期滞在ではあったものの割り当てていた予算を使い切るには至らなかった。残りの予算については、研究をより進捗し、新規の成果を出した上で慎重にしようするべきと判断し、本年度での使用ではなく、以下に記載するように、次年度に行う研究のための物品、旅費、その他の予算に割り当てるべきと判断した。このような理由から、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の最終年度であり、研究をまとめる必要がある。本研究では、大規模な数値シミュレーションが不可欠である。そのペースを向上させるため、高性能のPCを物品として購入する予定であり、必要な備品と合わせて予算の40%を見積もっている。また、成果の報告・議論のための学会参加のための旅費に予算の50%を割り当てる。研究成果を論文にまとめるにあたり、シミュレーション結果を表にまとめるなどの作業を行うための人件費とその都度生じる雑費にその他の10%を割り当てる。
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